パルムドールを受賞したパラサイトPhoto:Chung Sung-Jun/gettyimages

昨年5月のカンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞した『パラサイト――半地下の家族』が、日本でも1月から公開中だ。韓国映画では初めてとなるパルムドール受賞作。韓国の富裕層と貧困層の2つの家族を中心としたエンターテイメントの傑作だ。この作品が映し出す韓国の格差社会の現実と課題はどのようなものか。(国際政治評論家・翻訳家 白川 司)

韓国での観客動員数は
1000万人超の大ヒット

 カンヌ国際映画祭での最高賞パルムドールに続き、ゴールデングローブ賞外国語映画賞を受賞した映画『パラサイト――半地下の家族』(以下、『パラサイト』)は、韓国の貧困家庭をユーモラスかつ悲愴的に描いた韓国映画の傑作である。

 この映画をどういったジャンルに入れればいいのかは迷うが(「ブラックコメディ」と呼ぶことが多いが)、いずれにせよ韓国社会を鋭くえぐった完成度の高い作品であることは間違いない。

 ここでは、映画『パラサイト』を出発点に、この作品を生み出した韓国社会の特徴や課題などを考える。できるだけ「ネタバレ」しないように気をつけるが、どうしても内容に触れざるをえない点がいくつかあるので、純粋に作品を楽しみたい読者は、映画を先にご覧いただくことをおすすめしておく。