中国
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――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

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 環境の話になると中国の評判は相当悪い。だが変化が起き始めている。それは地球にとって素晴らしい知らせだ。一方、最終的に埋め立て地のごみや空の煙霧となるプラスチックや関連製品を生産するメーカーにとっては悪い知らせだ。

 ごく最近の証拠を挙げよう。中国は1月下旬、2020年末までに主要都市の大半の店舗やテイクアウトフードに使われる非生分解性のビニール袋を禁止すると発表した。こうした規制や、他の使い捨てプラスチック製品に対する新たな制限は、今後5年間に全国に少しずつ拡大される見通しだ。

 ビニール袋の影響がそれほど大きいと思えないだろうが、ちりも積もれば山となる。商品コンサルティング会社ICISの推計では、ビニール袋禁止令により、世界で最も重要なプラスチック製品であるポリエチレンの中国市場の需要が最終的に約300万トン(2019年の同国の需要に比べ9%)落ち込む可能性がある。中国はポリエチレンの輸入量も使用量も世界の断トツ首位で、世界全体の消費量の約30%を占める。

 ポリエチレン価格は2019年、貿易戦争や米国の生産能力拡大ですでに大幅に下落した。中国のビニール袋禁止令は今後数年にわたり、さらなる値下げ圧力となるだろう。

 敗者は恐らく欧州とアジアの石油化学製品の生産者だろう。シェール革命のおかげで、米国の工場はすでに原料の天然ガスに関してコスト優位性がある。そのうえ、米国と中国が貿易協定を結べば、縮小する中国市場を奪い合った末に、欧州やアジアの石油化学メーカーが閉め出されることになりかねない。中国の禁止令が発表された1月下旬以降、台北市場に上場する台塑石化(フォルモサ・ペトロケミカル)とインドのリライアンス・インダストリーズの株価はともに約7%下げた。

 中国の政策変更は石油業界にとって心配なシグナルでもある。英石油大手BPの推計によると、世界のエネルギー政策や技術が現在の軌道に沿って進めば、石油の輸送需要は2030年代半ばにピークを迎えると考えられる。そうなれば、プラスチックなどいわゆる不燃性素材が、需要を押し上げる唯一の重要な源になる。

 かつて「中国の夢」は裕福になることが全てだった。今やそれは生活の質であり、安全でクリーンな環境でもある。中国共産党は2017年末にこれを明確にし、党の中心的使命は単なる物質的繁栄ではなく「良い生活」を実現することだと改めて表明した。新型コロナウイルスの感染拡大によって、共産党に対する約束実現への圧力は強まるだろう。

 これまでの古い、より単純な中国の夢を利用してきた企業は、今後2、3年のうちに自社製品への需要が大幅に減退するのに気づかされるかもしれない。

(The Wall Street Journal/Nathaniel Taplin)