テスラPhoto:Reuters

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

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 米電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は資金調達など「理屈に合わない」と投資家に語っていたが、わずか2週間で考えを改めたようだ。テスラは13日、20億ドル(約2200億円)の新株発行計画を発表した。

 このタイミングで株式市場で資金調達するのはテスラの事業にとって好ましい行動だ。テスラによると、年初の手元資金は60億ドル超あったが、株価はその後に倍近くに値上がりしている。企業は必要に迫られて資金調達するのではなく、できるときにするべきだ。それにテスラの投資家は昔から、株式の希薄化を心配するようなタイプでは決してない。発表を受けてテスラ株は上昇した。

 テスラ株の勢いには、事業運営と現金需要が極めて予測不能という現実が伴う。フリーキャッシュフローは3四半期連続で黒字だったが、1四半期だけで最大14億ドルの現金を燃焼している。

 一方、テスラは今年、設備投資の見通しを示していない。13日の証券当局への届け出によると、開発中の新製品の数が多く、投資費用を「長い目で見て予測するのは困難」と説明している。

 ただ、テスラの株式発行は理にかなっている半面、今の株価水準での引き受けや、ましてや市場での買い入れとなると疑問がつきまとう。成長見通しがはやし立てられているにもかかわらず、現実には2019年下半期の売上高は前年同期比で減少している。米国内の19年通期売上高は15%減となった。

 利益、売上高、販売台数など多くの指標に照らしたテスラ株のバリュエーションは、他のどの自動車大手に比べてもひときわ高く、ニッチな高級ブランドと比較しても段違いだ。

 テスラは今年の納車台数が50万台を「難なく超える」との予想を示している。実現すれば前年比で35%増となる。ただし、それには中国事業の大幅な拡大が前提となる。コロナウイルスの流行は中国経済に深刻な脅威となり、テスラのサプライチェーン(供給網)にも打撃を及ぼす可能性がある。当局への届け出によれば、テスラも大半の自動車メーカーと同様に、ほとんどの部品をそれぞれ単一のサプライヤーから仕入れている。

 テスラは先月、「一時的な例外」はあるものの、今後は収益を確保でき、キャッシュフローも黒字になるとの見通しを示していた。マスク氏の業績予想に懐疑的な向きにとっては、13日の届け出は疑問を呈する新たな理由をもたらした。テスラは特定の財務情報や融資契約を巡り、12月に米証券取引委員会(SEC)から資料提出を求める召喚状を受け取ったことを明らかにした。

 何らかの打撃を被れば、新たな調達資金はそれを和らげる一助となるだろう。その上、テスラから見れば極めて割安な資金源だ。裏を返せば、資金を出す側にとっては極めて高くつくかもしれないということだ。

(The Wall Street Journal/Gunjan Banerji and Gregory Zuckerman)