過去5年間で2倍以上に拡大
緑茶輸出の半分を占める「抹茶」人気
抹茶入りのアイスクリームや菓子は今や国内では当たり前だが、足元では海外にも「Matcha」として広がり始めている。農林水産省によると2018年度の緑茶輸出は5012トン・153億円であり、過去5年間で2倍以上の伸びだ。中でも増えているのが抹茶で、緑茶輸出額の50%を占めている。
この輸出拡大の牽引役が、愛知県西尾市に本社を置く「あいや」である。同社は日本有数の抹茶メーカーで、国内トップクラスの生産量を誇り、年間出荷量1300トンのうち半分を輸出している。何しろ、以前は「グリーンティー・パウダー」と呼ばれていた抹茶を「Matcha」と統一して世界に広めた立役者があいやなのだ。
杉田武男社長(44歳)はこう語る。
「2001年にアメリカで現地法人を設立したとき、外国人が『まっちゃ』と発音できるスペルにして、展示会に出展しました。それからMatchaが少しずつ広がり始めました」
あいやは、国内に抹茶製品を普及させた功労者でもある。
西尾市は茶所として知られ、その起源は鎌倉時代中期まで遡る。茶業としての発展を始めたのは明治期で、玉露など高級茶を製造した。あいやは1888(明治21)年創業という130年を超す老舗だ。
抹茶の原料となる茶葉を「碾茶」(てんちゃ)という。碾茶は玉露と同じように栽培中に覆いをして遮光することで、渋みが抑えられ、甘み・うま味が増すと共に鮮やかな緑色に育つ。摘み取り後は玉露や煎茶と違って、茶葉をもまず、乾燥させた上、茶臼で時間をかけて挽き、数ミクロンの細かい粉末に加工するのだ。