「1泊500円」宿の外観
500円宿で知られる「旅館かなめ」。西成でも500円宿は珍しくなっている

1泊500円。耳を疑うような激安宿が大阪・西成地区には存在する。一体どんな宿なのか、そして泊まっている人たちは――。2月の寒いある日、その中の1軒に実際に宿泊してみた。(取材・文・写真/フリージャーナリスト 秋山謙一郎)

西成の中心地にある
「1泊500円」のドヤ

 この夏に開催される東京オリンピックを控えてホテル需要はうなぎ上り、宿泊費も高騰し続けている。ビジネスでの出張、プライベートでの旅行を問わず、宿泊費こそがもっとも懐の痛むところだろう。

 今、ホテルといえば、安くても1泊当たり、室内に風呂・トイレ付きのビジネスホテルで7000円から1万円程度、カプセルホテルでも3000円以上といったところか。

 近頃、はやりのホステル(宿泊客10名から30名程度を相部屋で収容する小規模の宿泊施設)でも3000円弱というのが相場だ。カプセルホテル、ホステルといえども、首都圏・京阪神地区といった都市部なら5000円程度といったところもあるくらいだ。

 そうしたなか、にわかに注目されているのが木賃宿、いわゆるドヤだ。ホテルはもちろん、カプセルホテルよりも安価で、しかも広々とした個室が利用できるとあって、静かに深く、人気を集めているという。今回、そのドヤのなかでも、格安を誇ると話題の「旅館かなめ」(大阪市)に泊まってきた。

 大阪の新名所・「あべのハルカス」から、西の方向へ、大人の足で歩くこと、およそ15分あまり。そこに、今や、古くて新しい観光スポットとして知られる「西成・釜ケ崎あいりん地区」がある。そのあいりん地区のど真ん中、西成のランドマーク、旧「あいりん労働福祉センター」近くに「1泊500円」と描かれた看板が掲げられていた。ここが激安宿、「旅館かなめ」である。

天王寺の観光地まで、歩いて5分程度だ

 歩いて数分のところには、天王寺公園もある。そこには大阪市立美術館や天王寺動物園もある。いわば文教地区だ。あべのハルカス、天王寺公園…繁華街と文教地区の狭間に、今や「日本一、ディープな場所」というキャッチが定着したあいりん地区があるのだ。かつてとは違い、治安の悪さはほとんど目立たない。外国人、日本人を問わず、若い観光客が目立つ。

 あいりん地区内には、この「旅館かなめ」の系列店も含めていくつかあるという。いずれも激安で知られる。地元民の話によると、西成での宿泊費は、格安価格だと500円から800円、900円といったところだ。1000円でお釣りがくる。1000円から1500円くらいになれば標準的な価格帯となる。2000円以上も出せば「高級ホテル」の部類に属する。そのなかには「大浴場」の設備を兼ね備えているところもあるくらいだ。

 もっとも、ここ大阪・西成をはじめ、東京・山谷、横浜・寿町にある、いわゆるドヤは、トイレは共同、風呂はない――というのが、ごく一般的である。

 ただし、共同ながらもキッチンが備え付けられている。そもそもが労働者の長期間宿泊を目的とする施設なので、自炊のためのキッチンは欠かせないのだ。ここがホテルとの大きな違いである。今でも、労働者たちは、ドヤ選びで重視するのは、風呂の有無よりも、簡単な自炊ができる設備があるかどうかだという。