韓国の感染急拡大、中間財輸出に打撃
Photo:Reuters

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

*** 

 韓国で新型コロナウイルスの感染が急速に広がったことは、世界の製造業にとって暗いニュースだ。世界のサプライチェーン(供給網)で身の丈を超える力を発揮している同国が、中国のように産業界の閉鎖措置を導入する可能性が高まっている。

 南部の大邱(テグ)で感染が急増したことを受け、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は23日、ウイルス感染の警戒レベルを最高水準に引き上げた。大邱近郊のサムスン電子の工場は、従業員1人が感染したことを受けて既に閉鎖されている。韓国総合株価指数(KOSPI)は24日、4%近く急落。韓国ウォンは対ドルで1%超下げた。

 韓国は中規模国家だが、貿易では巨人だ。輸出は国内総生産(GDP)の44%相当と、先進国の中ではドイツに次ぐ割合となっている。

 だがそれすら、韓国の貿易の重要性を十分に示してはいない。輸出品のうち、完成品はごくわずかだ。歴然たる専門領域となっているのは、他のメーカーが必要とする中間財である。輸出に占める中間財の割合はドイツで約55%、中国は62%だが、韓国では90%に上る。同国は半導体やディスプレーの一部カテゴリーを支配し、電子機器で圧倒的な地位にある。

 2015年時点で人口わずか5100万人だったにもかかわらず、同年の中間財輸出額は3820億ドル(約42兆円)と、フランスなど比較的富裕で大きな国より高い水準だった。

 コロナウイルスの感染拡大を抑制するための産業界の閉鎖はいかなるものであれ、世界の他国にたちまち影響を及ぼすだろう。ここ3週間、中国製品の代替を探して奔走していた企業は、韓国製の部品でも同じ難題に直面することになるかもしれない。

 その半面、楽観視できる理由も二つある。第一に、韓国の中間財輸出は大半が中国向けで、欧米の買い手に渡る完成品に組み込まれる。従って、既に中国で滞っている供給網がさらに混乱しても、欧米をはじめとする先進国の最終購入者の痛みをそれほど増すことはないかもしれない。今のところ主な障害は、閉鎖されている中国の工場であることに変わりはなさそうだ。

 第二に、韓国は民主政治と強力な公衆衛生権限を組み合わせている。初期のウイルス感染者の移動記録はオンラインで公表された。保健当局は感染対策を打ち出す上で、多くの民主主義国より幅広い権限を有している。報道の自由は絶対ではないとはいえ、ジャーナリストが耳障りな真実を広く伝える抜け道は、中国に比べればはるかに多い。

 だが、たとえ当局がウイルス感染のさらなる拡大を阻止できると仮定しても、経済活動の減速は何週間も続く公算が大きい。世界各地の工場にはたちどころに寒風が吹きそうだ。

(The Wall Street Journal/Mike Bird)