テレビや雑誌で登場する「医療の専門家」に、「医学博士」という肩書きをよく見かける。でも、「そもそも医学博士ってどんな資格か?」ということについて、一般に知る機会はほとんどない。

わたしたちが医療情報の受け手として最も気になるのは、「医学博士の言うことは信用できるのか?」ということではないか。

新刊『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』の著者であり、京都大学医学部特定准教授・皮膚科専門医、そして「医学博士」の肩書きを持つ大塚篤司氏が解説する。(構成:編集部/今野良介)

「医学博士」の肩書きだけでは信用できない

医療情報を判断する上で、残念ながら「肩書き」は参考にならない。特に「医学博士」はピンからキリまでいると知っておいたほうがよい。

「医学博士」とは、普通、大学院を卒業し、論文を書かないともらえない資格である。たとえば京都大学では、国際誌に自分の研究論文が掲載され、さらに研究内容に関して審査員の教授陣の前で「学位審査」と呼ばれる質疑応答をくぐり抜けなければならない。

国際誌だから、研究内容はもちろん英語でまとめる必要があるし、大発見とはいかないまでも、意味のある発見が求められる。また、学位審査で質問してくる教授陣の多くはノーベル賞候補に名前があがる人物であり、実際にノーベル賞をとった先生もいる。

しかし、残念ながら、そこまで苦労しなくとも医学博士がとれることもある。日本語の論文でも許可している大学もあり、学位審査もそれほど厳しくないこともある。十分なトレーニングを受けずに、医学博士を取得できてしまう場合があるのだ。

「どこの大学で学位をとったか」ということは、通常、肩書きに書かない。そのため、ノーベル賞級の発見をして取得した医学博士も、医学的にはあまり意味のない日本語の論文を書いて取得した医学博士も、患者さんからは同じ「医学博士」に見える。

したがって、医学博士が発信した医療情報だから信頼できるかというと、決してそんなわけではなく、自分自身が基準を持って判断しなければならない。

「医学博士だから信用できる」わけではない Photo: Adobe Stock

1つ、患者さんにできることをお伝えしておく。

信用に足る医学博士は、根拠のある医学情報をもとに患者さんに説明する。博士論文を書く際に、出典をつけることは常識として教わっているはずであるからだ。

医者にとってはいじわるな質問にはなるが「今の説明の根拠となる論文を教えていただけますか?」と聞いて、その場では無理でも、後日さっと教えてくれる医学博士は、きちんとトレーニングを受けていると考えてよい。

ただし「出典を教えろ」というのは、聞き方によっては「あなたのことは信用していない」と伝わる。「自分でも少し勉強したいのですが……」など枕詞をつけるほうがいいだろう。とても残念なことだが、出典を聞かれてもむっとしない医者が当たり前の時代には、まだなっていない。