悪質な自由診療を行う医師による医療被害は絶えない悪質な自由診療を行う医師による医療被害は絶えない(写真はイメージです) Photo:PIXTA

悪質な自由診療や広告による医療・美容の消費者被害が後を絶たない。最近、どんな医療被害が起きているか、その現状を把握するとともに、社会はどのように対応していくべきかを提案する。(医療ジャーナリスト 福原麻希)

自分にできることは何でも
根拠乏しい治療に600万円

 スキルス胃がんの患者・家族のための「希望の会」を運営する轟浩美さんは、3年前、夫の哲也さんを看(み)取った。区の胃がん検診で再検査になり、クリニックで診てもらったが、最初は胃炎と診断されピロリ菌の除去を受けた。だが、食後の胃の強い痛みがおさまらず、2つ目のクリニックで診察、X線検査も内視鏡検査でも異常なしだった。「ストレス性の胃炎」と診断された。

 やがて、食べ物がのどでつかえる感じもあり、ゲップをうまく出せなくなった。しばらくすると、食事中に胃が動かないような重苦しさを感じるようになり、食べる量も減った。1年後、再び、区の胃がん検診を受けたところ、スキルス胃がんと診断された。

 4年間、標準治療(公的保険で受けられる治療。科学的根拠に基づき、安全性と効果について、最も信頼性が高いと推奨される治療)を受けながら、「がんの治癒に役立つのではないか」と補完代替療法(「民間療法」とも呼ばれる)も試した。「補完代替医療」とは、現代西洋医学(通常の治療)以外の医療で、健康食品やサプリメント、特定の食事療法、鍼灸や気功の伝統医学などがある。