【東京】ダイヤモンド・プリンセス号が2週間の航海を終えて2月3日に横浜へ戻ると、ヘリコプター3機が頭上を旋回し、日本の保健当局者が乗り込んできた。イタリア人のジェナーロ・アルマ船長(44)は、新型コロナウイルスに感染した乗客が出た結果、もはや船が自分の完全な指揮下にはなくなったことを悟った。
「皆のために、日本当局者の規則とプロトコルに従わなければならないと、われわれはすぐさま理解した」とアルマ船長は語った。
多くの国からやってきた乗客2600人余りは程なく、2週間ほど船室にとどまるよう伝えられた。最終的に、新型コロナウイルスに感染していると診断された乗客は500人を超えた。これまでに4人が死亡したほか、各国に戻ってから陽性反応を示した乗客も、米国人36人を含め多数に上っている。
既に乗客全員が下船したが、26日時点でなお数百人の乗組員が船上に残っている。
乗客が下船できなくなってから、1000人余りの乗組員ほぼ全員の仕事が一変した。
乗組員の1人ジャック・メローズ氏は通常、ナビゲーションを担当し、寄港地で乗客の上下船を補佐している。だがいつの間にか、綿棒や体温計を持って乗り込んだ医療関係者の記録を取り、病人を救急車に乗せる手伝いに追われるようになった。
英国人のメローズ氏は、「経験したことのない全く新しい作業だった」と言う。「規則集は吹き飛んでしまった」
アルマ船長と乗組員を船上にとどめ、特別対応に当たらせるという日本の判断は一部から批判を浴び、彼らを感染リスクにさらすのは不公平だとの声も上がった。
感染症対策の専門家である岩田健太郎氏は、船内に適切な隔離設備がないことに警鐘を鳴らし、科学あるいは医療分野のトップが判断していれば、乗員を働かせるという決定は下さなかったはずだと指摘した。
日本の当局者は理想的な状況ではなかったと認める一方で、隔離の初期段階において何千人も陸上の施設に移動させることは現実的ではなかったと説明している。船室に隔離された乗客が食糧や医療支援、情報を必要としていたため、乗員の経験に頼らなければならなかったという。