また、近年はメリットの方が大きいと思わせる要因がほかにもあった。量的緩和政策に伴う長引く低金利と、それによって起きた金融機関の貸し出し競争だ。これは結果的にお金を借りる側の企業の立場を優位にし、融資を引き出しやすい環境を生み出すことになった。金融機関側も数少ない優良企業に殺到する。粉飾企業への融資を行っていた金融機関を見ると、当該企業とは地縁も何もない地方銀行が多数含まれているが、銀行を取り巻く厳しい実態を物語っているといえるだろう。

 そして、粉飾行為への抵抗感も薄くなってきているようだ。興味深いことに倒産した粉飾企業のうち、売上高が数十億円に達するような業界中堅の企業でも決算数字について把握しているのは社長のみという会社が複数見受けられた。つまり、これらの企業では、社長一人で粉飾決算のためのさまざまな偽装工作を行っていたと考えられる。財務・経理のプロではない、一社長が複数の金融機関をだまし通せていたのだ。

 偶然か必然か、金融機関が決算書でどのような数値を重視しており、どんな情報を隠せばいいか。また、異常値が出た場合のうまい言い訳も用意していたのだろう。

 例えば、架空の売り上げ計上を行っていた婦人服アパレルの「リファクトリィ」は断固として店舗ごとの数字を開示しなかったという。この会社も社長一人が決算の粉飾に関与、期間が長期にわたったため、本人にももはや正しい数字がわからないという異常な状況に至った。こういった素人同然の人間の手によっても金融機関にバレない決算書が作られていたわけだ。

 企業が粉飾を続けながら長年事業を継続できていたのも、優良企業としてのイメージを利用し、それにふさわしい決算書を用意すれば、一時的に資金繰りに窮しても比較的容易に金融機関が融資に応じてくれたことが大きい。実際、倒産した多くの企業は金融機関に発覚するまで、一般の取引先への支払いには支障を来さずにきた企業ばかりだ。

 また、粉飾について関与しているのが社長のみという状況は、経理担当者の交代がないことで一貫した粉飾を続けられる要因となり、従業員のリークによる発覚などを防ぐことにもつながった。こうして長期にわたり粉飾決算を行った企業の倒産が続発したのだ。