相場下落はコロナの
影響だけなのか?

「慌てて売らない」ことが一番の対策です。「慌てて売ったり積み立てを止めたりしない」――これが、相場暴落時に個人投資家が取れる最大の戦略である Photo:PIXTA

 日米共に非常にボラティリティの高い市場が続いている。ここしばらくのニューヨーク市場などは連日1000ドル前後で上昇と下落を繰り返しているし、日本の市場も概ね似たような動きになっている。

 このところ、市場が下落すると、その理由は判で押したように「コロナウイルス感染拡大への不安」ばかりだが、本当はそれが理由というわけではないと筆者は考えている。例えば日本の場合で言えば、コロナウイルスが話題になり始めたのは1月後半であったが、実際に大きく相場が下がり始めたのは2月下旬からである。

 したがって、コロナ問題はあくまでも1つのきっかけにすぎず、やや高値状態にあった市場が下落する引き金になった、というだけではないだろうか。実際、昨年秋の消費税引き上げは明らかに消費に悪影響を与えたわけだが、市場はそれとは裏腹に堅調に推移していた。そんな状態であったところにコロナウイルス問題が起こったことで、乾いた枯れ草に火が移って燃え広がるように、株価が下がり始めたというのが本当のところだろうと考えている。

 もちろん今回のウイルスは新型であり、まだ有効な治療法やワクチンが開発されたわけではないため、不安が増幅されるのは仕方がない。ただ、人類を破滅させるほどの猛威を振るうウイルスでなければ、感染者が増えることで免疫や抗体を持つ人も増えるだろうから、いずれは終息することになるだろう。

 ところが株式市場にとっては、先の読めないことに対する不安が最も悪い影響をもたらす。株式市場は今回のコロナウイルスの問題が医学上、健康上の懸念であるということ以上に、さまざまなところで経済活動に支障が生じ、信用収縮していくことに対する懸念、そして終息が見えない中でいつまでこの収縮が続くのかということに不安を感じているのだ。これこそが市場が揺れている最大の原因だろう。

 今後の相場の見通しについてはアナリストやストラテジストの間では意見が分かれるかもしれないが、筆者は相場を予測する立場ではないため、今後の動きについては何とも言えない。ただ、過去にも○○ショックという類いの市場の大幅な下落は何度もあった。オイルショック、バブル崩壊、ブラックマンデー、そして近年ではリーマン・ショックといった比較的短期間に株価が大きく下落することは筆者自身、何度も経験している。そんな時、プロの運用者や機関投資家ではない普通の個人投資家が考えるべきことはそれほど難しいことではない。答えはたった1つ、「慌てて売ってはいけない」ということだ。