建設工事で出る「残土」が、山や道路沿いなどに大量に捨てられ、あちこちでトラブルになっている。残土は産業廃棄物と異なり明確な規制がなく、大手ゼネコンや下請け事業者も「うちは関係ない」と無視を決め込んでいるという。残土ビジネスのカラクリを、桜美林大学の藤倉まなみ教授に聞いた。(清談社 角南 丈)

人命を奪う残土が
約30年間も放置

建設残土問題には暴力団も絡んでいます。残土をいい加減に処理することで、土砂崩れや粉じんの飛散、さらに水質汚染など様々な問題が生じている Photo:PIXTA

「東京オリンピック工事の裏で残土被害続出」
「不法投棄された残土が崩れ、民家を襲う」
「リニア建設工事で残土からウラン検出」
「無許可残土埋め立てで暴力団逮捕」
「残土置き場で死体発見」

 近年、たびたびメディアで報じられる「建設発生土」(以下、残土)関連のニュースだが、そのほとんどはネガティブな内容ばかりだ。

「残土の不適正処理問題(以下、残土問題)とは、平たくいえば工事現場から出た残土が国有地や私有地、山や道路沿いなどに不適切に投棄されている問題です。これによって土砂崩れ、粉じんの飛散、生態系の破壊などを招いています」

 さらに、残土ビジネスが暴力団の資金源ともなる問題も生じているという。

 2020年1月、総務省は都道府県や市町村などを対象に、残土処理の実態調査を開始することを決定したが、そもそもこの問題は今に始まったわけではない。

「残土問題は1990年頃からずっと続いており、数年おきにニュースになります。東京都や千葉県、大阪府など多くの都道府県では残土条例を作って、残土処分を許可制にしていますが、国レベルではまだ法的な規制に至っていません」