患者の治療には、まずは健康な人の血が必要だ。新型コロナウイルス感染の治療薬開発を目指す研究者にとって、回復した患者の血液サンプルを確保することが喫緊の課題となっている。この血液検体が新薬開発の鍵を握るためだ。新型ウイルス感染者は世界で18万人以上に達しているが、製薬業界幹部や研究者、保健当局関係者によると、回復した患者の血液サンプルは不足している。「まるでゴールドのように扱われる」。治療薬の開発資金を支援する連邦機関、米生物医学先端研究開発局(BARDA)の責任者、リック・ブライト氏は血液サンプルについてこう話す。「標本が限られており、量もわずかしかない」ヴィル・バイオテクノロジーやアブセレラなどの医薬品メーカーや研究者グループは目下、新型コロナウイルスに対する抗体治療法の開発を急いでいる。だが、新たに発見された未知のウイルスに対する治療薬を早期に開発する上で、血液サンプルの入手が大きな壁となって立ちはだかっているのだ。