【オピニオン】新型コロナはポピュリズムを断ち切るか
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――筆者のウォルター・ラッセル・ミードは「グローバルビュー」欄担当コラムニスト

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 新型コロナウイルスの経済的インパクトは劇的だが、世界の政治に対するこのウイルスの影響は、さらに大きいかもしれない。まず、一部諸国が比較的早期に回復し、他の諸国がより長期的でより深刻な社会的・政治的危機に直面することで、世界のパワーバランスが大きく変化する可能性がある。しかし今回の危機は、各国の国内政治にも影響しており、この点での変化が、最も長期にわたる影響を及ぼす公算が大きい。

 今回のパンデミック(感染症の世界的大流行)が起きるかなり以前から、しばしば独裁的指導者の下で進行したポピュリスト(大衆迎合主義者)的動きが、エスタブリッシュメント(既存勢力)による中道派の政党や思想と対立する状況が、世界各地で生じていた。1990年代から国際的な中心課題となってきたグローバル化支持の自由貿易政策が、国際通貨基金(IMF)、世界貿易機関(WTO)、欧州連合(EU)などの国際機関とともに、ポピュリストらの主要な標的になってきた。

 パンデミックが、技術的専門性と多国間協調主義を支持する新たな動きを誘発するのか、それとも、冷戦後の世界の「新自由主義的秩序(ネオリベラル・オーダー)」などと批判勢力が呼ぶ状況の後退を加速させるのかが、現在問われている。

 新型コロナウイルスのような問題に直面する状況下では、既存勢力による政治や国際的政策の立案に立ち戻るべき明確な理由が存在する。パンデミックに伴う医療および経済面の問題は、熟達した指導者や国際協調を必要とする。感染症の世界的拡大とその経済的影響はどちらも、各国政府が単独で対処できるものではない。1つの国が流行の抑制に成功したとしても、隣国が失敗すれば、再流行が起きる。そして、世界の貿易慣行や金融市場の混乱に対しては、世界経済を立ち直らせるための協調行動が必要になる。

 しかし、これまでのところ、新型コロナウイルスは世界の指導者間の協力を促しているようにも、国際機関の尊重を促しているようにも見えない。パンデミックによって、米中間の溝は広がっている。EUは迅速に動いて、ユーロ圏加盟国の財政赤字に関する規制を解除したものの、欧州の各国政府は現段階ではあまり調整せず、自国の問題への対応にほぼ集中している。世界保健機関(WHO)は、緊急会合から台湾を除外したり、中国の新型コロナウイルス対応を称賛したりするといった措置のおかげで、中国政府の代弁者のように見えてしまっている。主要7カ国(G7)も主要20カ国・地域(G20)も目立った役割を果たしておらず、IMFと世界銀行も世界的な対応の最前線には立っていない。主に対応策を取りまとめているのは、各国政府であり、国際機関ではない。