経済学の教科書は、
なんであんなにおもしろくないのか?

――とは言え、実際の経済学というものは、非常に難しいという印象があります。これはいったいどうしてでしょう。ただテキストを読んでいるだけでは、到底理解できないのですが。

 それは、ストーリーがないことに起因しています。経済学のテキストには数式やグラフが多すぎて、ストーリーがあまりありません。すると数学ができないと経済学のテキストを読むことすら難しいと感じるようになります。だから、一般人がそういう経済学を目の前にすると、興ざめしてしまうのです。

 そんな人のために書いたのが、この2冊の本、『この世で一番おもしろいミクロ経済学』『この世で一番おもしろいマクロ経済学』、というわけです。

 経済学は日常に密接しているのでもちろん勉強した方がいいのですが、数式だらけのテキストを読むとうんざりしてしまいます。勉強したいというインセンティブを働かせるためには、どんどんページをめくって先が読みたい! という気持ちにさせなければいけません。そのためには「ストーリー」がベストなんです。

 子どものときに、遺伝についてマンガで読んだことがありますが、非常にわかりやすかったんですよね。ジョークも入っていました。ジョークとなると、みんなが理解したいと思います。だって、みんなが笑っているのに、自分だけが笑えないというふうにはなりたくないですから(笑)。

 で、「マンガ」という手法で、ストーリーを使おうと思いたち、この企画が生まれたんです。

なんと、経済学の授業のサブテキストに!

――今回出版されたこの2冊について教えてください。そもそもこの経済学をおもしろおかしく解説しよう、というアイデアは、あなたの経済学ネタから生まれたのでしょうか。

 もちろん。他にも、ワシントン大学で経済学のクラスを教えているので、そこからもアイデアが浮かびました。あとは高校で教えている経験も役に立ちました。

 高校の授業は選択クラスなので、元々経済学を勉強したい生徒が集まります。ですので、経済学の中身を教えるというよりも、経済学がいかにおもしろいかを、今現実に起きていることで説明したり、生徒にプレゼンをさせたりします。生徒たちも、僕自身も毎回とても楽しんで学んでいます。

――この本を書くのにどれくらい時間を費やしたのでしょうか。

 それぞれ1年半です。イラストを描いたのはグレイディ・クライン。優秀なイラストレーターです。まず2人でアイデアを出しあって、テキストを作るのに1年。それからイラストを描くのに半年、それぞれ費やしました。最後の半年は彼の仕事です。大変な作業でした。

――この本は中学生でも理解できるほどおもしろい本だと思います。

 この本を書いた目的は、経済学とは何かについて、誰もが理解できるようにすることです。すでにこの本はいくつかの大学で、経済学の授業のサブテキストとして使われています。高校でも使われています。私は、このこともネタに取り入れています。

「学生は200ドルも出して分厚いテキストを買って読まないが、たった20ドルのこの本だとおもしろいから買って読んでしまう」

 最近は、子どもを持つ親からもメールをいただきます。イラストを見せながら、子どもに読んであげているようです。

――親も楽しく学べたからこそ、子どもにも読んで聞かせようと思ったのでしょうね。