「経済学ってどこからどう勉強していいかわからない」
「もっとおもしろく学ぶことはできないのか」
……こんな悩みの声は今も昔も変わらない。
そんな経済学の世界に、現在進行形で革命を起こしている男がいる。自称「お笑いエコノミスト」ヨラム・バウマン氏だ。彼が生み出した『この世で一番おもしろい経済学』シリーズは、昨年11月にミクロ編、2012年5月にマクロ編が日本でも発売され、ともにベストセラー街道を驀進中だ。
そこで大ヒットを記念して、本シリーズの生みの親であるヨラム・バウマン氏に「お笑いエコノミスト」と自ら名乗るにいたった経緯から、スティグリッツやクルーグマンへの思い、そしていまや世界中でサブテキストとして使用されているシリーズ2作の誕生秘話までお話を伺った。
(聞き手、写真/ジャーナリスト 大野和基)
「お笑いエコノミスト」誕生秘話!
バウマン、なんと経済学ネタを引っさげてワールドツアーへ!?
――あなたは「世界で唯一のstand-up economist(お笑いエコノミスト)」と名乗っているそうですね。「お笑いエコノミスト」という言い方は自分で考えて名付けたのでしょうか? それとも誰かに名付けられたのでしょうか?
自分で考えて名乗ることにしました。
――いったいどういう状況で、お笑いエコノミストになったのでしょうか?
ワシントン大学で、大学院に通っているときに。ストレス発散のために、冗談で経済学のテキストブックのパロディを書いたのが始まりです。
――お笑いエコノミストになろうと思い立ったわけではなく?
あくまでジョークです(笑)。<わかりやすく解説した経済学の10の原則>というタイトルでした。それが、最終的に“The Annals of Improbable Research”(ありそうにないリサーチ紀要)という、科学のユーモア雑誌に掲載されました。
一方、毎年開催される大きな科学の学会で、ユーモア大会が開かれているのですが、2004年はたまたま私が住むシアトルで開かれました。そこで私が発表するように招待されたのです。そのときあまりにも楽しかったので、スタンダップコメディでもしているかのような状態になりました。
このことがきっかけで、地元のコメディ・クラブでオープン・マイク(聴衆が舞台に立ってできるパフォーマンス)をやるようになりました。シアトルのComedy Undergroundというクラブです。
そうやってネタを披露しているうちに、聴衆は経済学のコメディに非常に関心を持つことがわかってきました。コメディアンの永遠の課題と言えば、他の同業者とどう差別化するかにつきますが、私には経済学の知識があるので、それを使って差別化をはかってうまくいったのです。
結局、それがフルタイムの本職になってしまいました。今は全米だけではなく、世界中の企業や大学のイベントに招待されます。春にはイギリスとドイツに行きましたし、秋にはフランスに行きます。9月にはシンガポール講演も控えています。