新型コロナウイルス流行が全米を席巻する中、まるで経済のスイッチが切られ、最初はこちら、次はあちらと光が消えていくかのようだ。このスイッチが最終的にオンに戻れば、経済は順調に回り始めるかもしれない。だがそれは米国がこの危機にどう対処するかにかかっている。第一に、感染流行に襲われる前の経済状況には危険なほど悪い要素は見当たらなかったと理解することは重要だ。もちろん問題がなかったのではない。成長は緩やかなペースにとどまり、インフレ率や金利は政策担当者が目指す水準を下回り、失業率低下にもかかわらず賃金の伸びはさほど大きくなかった。だが景気後退(リセッション)を通常引き起こすような過度に危険な状態には陥っていなかった。株式市場のバリュエーションはファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を超える上昇を示したが、ドットコム・バブルがはじける前ほどではない。企業債務は急増したものの、金融危機に先立つ時期に匹敵するほど経済全体の債務比率が上昇したわけではない。さらに1970年代に見られた米連邦準備制度理事会(FRB)が急ブレーキを踏み込まざるを得ないほどの激しいインフレは起きていない。