ふつふつと人気を集め始めた「自分らしく」本

 そんな状況もあってか、韓国では2018年あたりから売れている本の流れが明確に変わってきました。日本でもヒットした『私は私のままで生きることにした』だったり、くまのプーさんの名言集『幸せなことは毎日ある』とか、『ぼのぼのみたいに生きられたらいいのに』のような、背伸びせず、自分らしく生きることを後押しする本が売れ始めたのです。

 私が翻訳を担当した『あやうく一生懸命生きるところだった』も、そんなときにタイミングよく出た一冊でした。この本も、タイトル、内容を含め、世の中の空気にバッチリはまったように思います。実際、韓国での本書のレビューを見ると、「自分のことを書いているのかと思った」など、共感の声がものすごく多いことがわかります。

 また『あやうく一生懸命~』については、マーケティング面もうまかったように思います。韓国の出版社はインスタグラムなどSNSでの拡散を想定し、ブックデザインにかなり力を入れています。ヒット作の場合はスペシャルエディションとして新たなカバーをかけて新鮮味をもたせることがあるのですが、本書についても夏休みバージョン、お花見バージョン、クリスマスバージョンなど5回ほどカバーを変えています。