オムニチャネル時代に私たちの暮らしはどう変わるのか。前回に引き続き、自分好みの買い物を楽しむOL・サチの1日を描いたフィクション小説風のストーリーでその様子を紹介してみよう。お気に入りの店でランチをした後、カバン店を回ってすっかり昼休みが過ぎるのを忘れていたサチは慌てて職場に戻り、アポイントがある得意先に飛んで行った。
午後、お得意さんの所へ。
何とか直帰にこぎつける
午後は、新しい商品の説明のため得意先のZ社を訪問する予定だ。
サチは、今日はそのまま直帰してやろうかと思っている。上司には説明が長引いたということで、後で電話しておけばよい。実は、帰りに父に頼まれたゴルフ用品店で品物を受け取るだけでなく、今朝、電車の中でスマートフォンを見ている時に、友達の加奈子の口コミで見つけたスィーツのお店に寄ってみたかったからだ。
そうこうするうちに得意先に到着、すると突然、担当のAさんからこう言われた。
「サチさん、今やオムニチャネルの時代なのよ。生活者はシームレスなのよ!」
唐突な発言にサチは少々戸惑ったことは言うまでもない。というのもこのお得意さんは、ITのことなんてまったくのちんぷんかんぷん。旧石器時代に生きているのかというくらい、サチが何度新商品の説明をしてもなかなか理解してもらえかったのだ。
よくよく聞くと、この前上司に連れられてある会社のセミナーに行ったそうで、「オムニチャネル」は、どうやらそこで仕入れた情報らしい。「へぇー」と聞き流しながらも、お得意さんに言われた大切なキーワードだと思い、スマホのメモ機能にささっと書き留めた。
得意先の訪問は思った以上に早く終わった。上司に「直帰します」と電話しようにも、さすがに少し早すぎるので、このままだと帰社命令を言い渡されてしまう。そこでサチは、近くのコーヒーショップで時間をつぶすことにした。
そしてスマホの「お気に入り」に保存した、加奈子の口コミが載っているスィーツの店のサイトを見ながら、やっぱりおいしそうだと思った。