東日本大震災後、消費者動向に変化が起きていると指摘される。たとえば、それら消費者の心をつかむためのマーケティングをどのように行えばよいのか。今日のマーケティングに欠かせない情報クリエイティブを活用した「マーケティングメッセージ」のつくり方、次世代型IMC(Integrated Marketing Communication=統合型マーケティング コミニケーション)の実践プランニングについて、このほど『どう伝わったら、買いたくなるのか』(ダイヤモンド社)を上梓した藤田康人・インテグレート代表取締役CEOが、7月1日に行った出版記念講演をダイジェストで再録する。

「どう伝わったら、買いたくなるか」<br />“4つのインサイト”が消費者を動かすメッセージを生む

  東日本大震災後の消費者動向に変化がみられます。

 まず、結婚関連産業が盛んになっています。震災後、誰かとつながっていたいという気持ちが強くなったからでしょう。2点目として、応援消費につながる商品が売れています。自分の消費行動が社会のためになるならなどを考えるようになっているからです。

 3点目として、所有しないライフスタイル「シェア」という考え方が出てきました。津波の映像を見たとき、所有することに価値があるのかを考えるようになったようです。

 これら3点を見ていくと、震災後のインサイト(incite=洞察)にはキーワードが2つあります。

 1つ目が「絆(きずな)」。家族や仲間と繋がっていたいという心理です。2つ目が「サステナビティ(持続可能性)」。社会と自分との関連性、社会にとってよいことなのか、持続可能なのかそうしたことを強く考えるようになっています。こうした消費者動向をつかみ、マーケティングをしていくことが今必要です。

もはや情報は
「伝える」ものではない

 インターネットが登場する以前は、情報を得る手段が限られていたので、皆が情報に飢えていました。どれだけメディアに登場したか、広告を打ったのかでその効果もある程度分かりました。しかし、インターネットの普及により情報が氾濫してくると、自分の情報処理能力にも限界を感じるようになり、欲しくない情報に対しては「情報バリアー(防御壁)」を張り、受け付けないようになりました。

 つまり、情報は「伝える」ものではなくなっているのです。現在、消費者はメディアが発信する情報をそのまま信じる受け手ではなく、欲しい情報を精査し、自らも能動的に情報を発信し、シェアするようになりました。この時代の情報の取捨選択権は、消費者が握っています。情報を「伝える」から「伝わる」に代わっているのです。