貯金も投資もしておらず、老後に向けた資産形成ができていない30代、40代が増えている。年金制度に対する信頼が大きく揺らいでおり、コロナ危機で経済の先行きはますます見通しづらくなっている。老後の不安は尽きず、将来を見据えた人生設計をするならば、早ければ早いほどいい。大切なのは自分の現状を知り、自ら備えをすることだ。
子どもがおらず、共働きの夫婦は家計に余裕があると思われがちだが、実際に計算してみると、老後資金が厳しい結果となることも多いという。どうすれば余裕のある老後を実現できるのか。
「貯金は200万円程度しかない。このままだと老後がヤバいというのは何となく分かっているんだけど、投資なんてやったことないし……」
都内の中小派遣会社に営業課長として勤務する37歳の松尾鉄平さん(仮名)は、将来に漠とした不安を抱いている。しかし、具体的な資産形成に踏み切るまでには至っていない。そんな30代、40代が増えており、「貯蓄ゼロ」の世帯も少なくないという。
4歳年下のネイリストと結婚して5年、子どもはいない。松尾さんの年収は400万円(手取り年収は300万円程度)、妻の収入は歩合制のため毎月ぶれるが、だいたい手取りで月額十数万円程度という。
“二馬力”あればそれなりの年収になる。今後も子作りする予定はなく、教育費を積み立てる必要がないので、それなりに余裕はある。今は都内の家賃12万円の1LDKの賃貸アパートに住み、お酒が好きなのでよく外食もする。結果として、「なかなか貯蓄ができない」のが悩みだ。
課長の役職は付いているが、完全に名ばかり管理職。「会社が残業代を出したくないから管理職の肩書が付いただけ」で、これ以上の出世も年収アップもあまり望めないという。
「派遣スタッフを家電量販店などの倉庫とかに派遣するのが私の仕事。自分もいつか、彼らと同じような仕事をするようになるのだろうかと、ときどき不安になる」
老後2000万円問題が話題になったときには心が少しざわついた。「どこの富裕層の話?そんなの無理に決まってる」