EU離脱や新型コロナで財政拡張へ、英国が抱える「ポンド安」リスクEUのくびきから解き放たれた英国の財政拡張路線は、吉と出るか凶と出るか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

EUのくびきから放たれた英国
20年度予算案で財政拡張が明確に

 3月11日、英国のジョンソン政権は2020年度(英国の会計年度は日本と同様に4月始まりの翌年3月締め)の予算案を公表した。

 英国は1月末に欧州連合(EU)から離脱したことで、EUの財政ルールに縛られる必要がなくなった。そのためジョンソン政権は、EU離脱による自主権の回復をアピールするため積極財政路線を採ると予想された。

 ここでEUの財政ルールを確認すると、EUは安定・成長協定(SGP)と呼ばれる規則に基づき、加盟国に対して単年度の財政赤字を国内総生産(GDP)の3%以内に、また公的債務残高を同60%以内に抑制することを求めている。19年末時点で英国の公的債務残高はGDPの86%程度と、SGP違反の状態にあった。

 一方で財政赤字は、2017年からGDPの1%台半ばにとどまり、EUの財政ルールが守られていた。しかしEU離脱のベネフィットを有権者にアピールしたいジョンソン政権は、積極財政路線に転じて英景気を刺激することを重視した。健全財政志向のジャビド前財務相を2月の内閣改造時に事実上更迭したことは、その布石と見られていた。

 さらに、年明けから世界的な流行(パンデミック)となった新型コロナウイルスの影響で世界景気が下振れしたことも、財政拡張を肯定する良い理由となった。結果的に2020年度予算案は、減税や公共投資の増額を中心とする拡張型予算となり、財政支出は前年比約2割増となる491億ポンド(約65兆円)になるとの試算が示された。