ドナルド・トランプ米大統領の不動産王時代の伝説的な取引手腕は、現実というより幻想に近い。だが先週末の重要な原油外交では、実力以上の手腕を発揮した。達成が幾度も危ぶまれてきた協調減産は、米国を含む23カ国で合意に達した。減産量は日量1500万バレルに及ぶともみられている。米国の立場から見て、今回の合意で最も目を引く点は、トランプ氏がほぼ自国負担なしで結果を引き出したことだ。自主減産のほとんどは、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟主要産油国で構成する「OPECプラス」が実施する日量約970万バレル。残りは、高い生産コストのためいずれにせよ減産が見込まれる米国のシェール、カナダのオイルサンド、ブラジル沖の油田だ。「OPECプラス」のメンバーであるメキシコに要求されていた日量25万バレルの減産を米国が肩代わりすると約束することで、顔をつぶさない形の合意がまとまった。