キャッシュレス決済ブームが静まったかのようなキャッシュレス決済だが、その果たす役割は足元で大きくなっている。(写真はイメージです) Photo:PIXTA

コロナ騒動に吹き飛ばされた
「キャッシュレス還元祭り」はいま

 あの「祭り」はどこへ行ってしまったのだろう。あれほど日本中が踊っていた「キャッシュレス音頭」がすっかり聞こえなくなってしまった。

 本来であれば、キャッシュレス・ポイント還元事業の最後の山場がゴールデンウイーク消費のはずだったろう。その後にはマイナポイント還元も控えており、五輪景気とインバウンド消費の相乗効果で、昨年10月以降の消費増税ショックを克服、国内景気も大幅回復――というシナリオだったのだが……。そんなものは、もはやゴミ箱に捨てられてしまったかのようだ。

 そう、日々の話題の主役はすっかり新型コロナウイルスに取って代わられた。6月末までだったポイント還元の期限を延ばそうという動きはあるが、還元対象だった飲食店にせよ小売店にせよ、消費者が外出できないのではどうしようもない。「2025年までにキャッシュレス比率を約4割まで引き上げる」と花火を上げていた関係省庁も、すっかり大人しくなっている。

 これは不可解な話だ。感染拡大に怯える今だからこそ、キャッシュレス決済が有効だというのに――。それも、これまで期待されていたものとは別の意味でだ。

 もともとキャッシュレス決済導入のメリットは、企業側にこそ大きいと言われてきた。働き手不足、現金を扱うコストや防犯面の負担が大きい現状、ポイント還元やクーポン配布による売り上げ増への期待など、キャッシュレスの推進は、経済効率を上げる手段だった。

 それに比べて消費者側にとってのインセンティブは、ポイント還元程度といっていい。おトクではあるが、不正使用リスクやキャンペーンに乗せられて使いすぎてしまうというマイナス面も無視できない。

 その後、店側・消費者側ともにキャッシュレス決済に慣れてきたとはいえ、決済端末の通信に時間がかかったり、店ごとに使える決済手段がまちまちだったり、「結局現金が一番早いし、汎用性があるよね」と思うこともしばしばだった。