来週、国会では緊急経済対策を含む20年度補正予算案の審議が始まる。しかし、今回の緊急経済対策は、3月上旬に安倍首相が「全校一斉休校」を決断した頃に策定作業が始まったものであり、その前提となる条件が現在では完全に崩れ去っているのではないだろうか。「平時の経済をV字回復させる」ような経済対策は、いったん破棄して完全に組み替えるべきだ。この際、あえていえば「戦時体制」の予算を編成してはどうだろうか。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)
安倍首相が「一律10万円給付」に転換
「減収世帯30万円給付案」は撤回
安倍晋三首相は、新型コロナウイルスを巡る経済対策の一つとして、国民1人当たり一律10万円を給付する方針を正式に表明した。減収世帯に30万円を給付する当初の措置は撤回することとなった。一律10万円給付には12兆円超の財源が必要になるが、緊急経済対策を含む2020年度補正予算案を組み替えて捻出することになった。
減収世帯に30万円を給付する措置は、制度そのものが分かりづらい上に、自己申告が煩わしく、いつもらえるかも分からない。本当に必要な人がもらえるのかどうかも分からない。安倍政権は国民から酷評されていた。
それに加えて、安倍政権の「全世帯への布マスク2枚配布」の決定が「アベノマスク」と、日本国民のみならず海外からも物笑いになっていた(本連載第237回・P2)。この施策がいかに愚策かは、テレビニュースなどで、安倍首相が出席する会議体の映像を観れば分かる。首相だけが、小さな布マスクを着けていて、他の閣僚や官僚、専門家は皆、使い捨ての大きなマスクを着けている。これは異様な光景だ。