運休継続で懸念される
鉄道事業者の経営悪化

 だが、問題はゴールデンウイーク明けの動向である。

 政府は緊急事態宣言の延長の可否について、ゴールデンウイーク中に結論を出すとしている。だが、休業要請を受けて営業自粛中の店舗の中には、とりあえずゴールデンウイーク最終日でもある5月6日までの休止を予定しているところが少なくない。

 政府がさらなる営業自粛を求めるのであれば、事前の告知や準備も必要になる。緊急事態宣言を延長するかどうかの決定時期がずれ込めば、営業再開に踏み切る店舗も増えかねない。

 利用者の側でも、ゴールデンウイークが終われば現在の窮屈な生活から多少なりとも抜け出せるのではないかという淡い期待をしている人は多い。「自粛疲れ」の反動で、人の移動を再開させないためには、もう少し早い段階で方針を示す必要があるのではないだろうか。

 鉄道各社ではゴールデンウイーク後を見据えた動きも始まっている。

 JR東海とJR西日本は4月20日、4月24日から当面の間、東海道・山陽新幹線で臨時列車の運転を全て取りやめると発表した。また、京都・大阪と関西空港を結ぶ在来線特急「はるか」も当面の間、一部定期列車の運転も取りやめ、1日当たりの運行本数を60本から32本に削減するという。

 東武鉄道も4月21日、4月25日から当面の間、日中時間帯を中心に伊勢崎線、日光線の特急列車の一部を運休すると発表。日光線系統の「スペーシア」「きりふり」「スカイツリーライナー」の下り列車では、平日は32本中8本、土休日は35本中12本が運休となる。

 通勤時間帯の運転本数削減は列車混雑につながる可能性があるため、各事業者ともほぼ所定の本数を維持して運行を継続しているが、今後は観光輸送を目的とした中長距離列車の運休が広がっていく可能性がある。これは混雑悪化に影響するものではなく、外出抑制につながることから、効果的な取り組みと評価することができるだろう。

 だが一方で、こうした取り組みにより、鉄道事業者の経営環境は厳しさを増している。

 足元では平日の乗車率は前年比6割以上の減少、土休日は8割以上の減少となっており、今期は前期に比べて大幅な減収が避けられない情勢となっている。都市機能を維持するための運行の継続、感染拡大を防止するための一部列車の運休の2つを行いながら、いかに経費を削減し、業績の落ち込みを食い止めるのか。各事業者は難しいかじ取りを迫られている。