坂田建設の工事現場Photo by Tomomi Matsuno

都内の建設現場が「コロナ隠し」を懸念して工事を中止した。4月20日に現場の下請け作業員を名乗る人物が元請けであるゼネコンへメールで告発し、同日にこのゼネコンから協力会社へ「現場休止」の通知が出されたのである。特集『日本企業 緊急事態宣言』の#21では、この告発メールの全容とともに、コロナ隠しが多発しかねない現場の実態をレポートする。(ダイヤモンド編集部 松野友美)

ゼネコンに告発メールが届き
翌日から工事は休止になった

 都内の建設現場が「コロナ隠し」を懸念して工事を中止したことが、ダイヤモンド編集部の取材で分かった。

 4月20日、創業70年を迎えた都内老舗地場ゼネコンの坂田建設は、専門工事業者など協力会社に向けて2通の文書を出した。

 1通は「新型コロナウイルス感染症に係るお願い」、もう1通は「新型コロナウイルス感染防止対策施行による現場休工のお知らせ」と題している。

 前者は、まず、緊急事態宣言発令に伴い、ゼネコン各社が工事中止を決める中、坂田建設は現状では工事を継続することにしているが、状況により中止の判断も考えるということを示した。さらに、従業員や下請け作業員またはその家族の新型コロナウイルスへの感染が判明したら、秘匿せずに報告してほしいと続けていた。

 セットになった後者には、坂田建設と東武谷内田建設のJV(共同企業体)が施工する東京都墨田区にある旧すみだ中小企業センターの改修工事現場を、4月21日から29日にかけて休工にすることと、この判断に至った経緯を知らせる内容が記されていた。

 経緯は衝撃的なものだった。

「現場休工」の通知当日、坂田建設の会社ホームページに匿名のメールが一通送られてきた。

 匿名メールは、「突然のメール申し訳ございません」の一文から始まり、自身はこの現場で作業員として働いていると説明している。そして、次のようにつづられていた。