プロ野球の斉藤惇コミッショナー
早ければ6月19日に無観客での開幕を目指すと決めたプロ野球の斉藤惇コミッショナー Photo:JIJI

野球ファンが求めることは何か

 日本野球機構(NPB)は5月12日、オンラインによる臨時オーナー会議を開き、「早ければ6月19日、無観客での開幕を目指すことを確認した」と報じられた。

 「一日も早く開幕を」と願う気持ちは球団側もファンも同じだろうが、私はオーナー会議の審議に深い懸念を感じた。

 コロナ禍の前と後では、世の中が変わるだろう。

 価値観も、常識も、生活スタイルも経済システムも、いや応なしに変化するに違いない。多くの人たちが漠然とそう感じている。自営の店主さんも、会社員の方々も、以前とは何かが変わる、新しいスタイルを見つけ、順応しなければならない、と。ところが、プロ野球界からは一切、そのような発想も覚悟も伝わってこない。以前と同じプロ野球を再開することしか頭にないようだ。

 オーナー会議に先立って、「オールスター戦の中止」も発表された。少しでも多くの公式戦を消化するためオールスター戦はやむなく中止するという決定だ。このニュースに接したときも、プロ野球の経営者たちがエンターテインメントの担い手としてのプロ根性を失っていると感じた。

 想像してほしい。今、野球ファンが求めているのは何だろうか。

 「球春」ではないか。「白球の響き」だ。日本の大半を占める戦後生まれ世代がかつて経験のない「規制された毎日」。野球もできない、見られない。その日々から少しずつでも解放される祝祭として、ふさわしいのはどんな幕開けか?

 一日も早く、毎日6試合を当たり前のように開催する――。緊急事態宣言がまだ一部で続く中で、そんな日々をファンは一足飛びに求めているだろうか?

 せめて一試合でも、二試合でも、生きた野球が見たい! まずはそれが切実な願いかもしれない。だとすれば、オールスター戦こそが、幕開けにふさわしい祭事ではないか。

 オールスター戦ならば、すべての野球ファンがその一試合をみんなで見て、感激を共有できる。前半戦のデータがないから、昨年の実績で選手を選ぶほかないけれど、インターネットを利用してファンの議論や投票を求めたら、それはそれで盛り上がり、ひとつのエンターテインメントを提供できる。

 こうしたファンの気持ちに寄り添う発想が欠落しているのが、いまの日本プロ野球(NPB)ではないか。その体質がコロナ禍によって露呈している。

 例えば、「せめて年間80試合はやらないとシーズンが成立しない」などという先入観に、なぜ縛られる必要があるのか? 毎日6試合やっても、ファンはせいぜい一試合しか見られない。それなら、セパ各一試合だけ毎日実施するのもひとつのアイデアだ。

 コロナ禍の現状をふまえて、「これまでと同じことをやる」のでなく、「これまでできなかったことをやってみる」。この機にプロ野球の再興を仕掛ける覚悟と野心的な挑戦があってほしいと私は願う。