新型コロナウィルスの影響で、世の中が大きく変わりつつある。子どもたちにとっても、これからはオンライン授業が広がるなど学習スタイルが変化し、社会に出るまでに習得すべき能力も、親の時代とはかけ離れて変化していくことが考えられる。そんな変化の激しい現代において「親は子どもに何をしてあげられるか」と悩んでいる人は多いのではないだろうか。
そこで、これまで教育を軸に取材を重ねてきた著者が、教育学、生理学、心理学、脳科学等、さまざまな切り口の資料や取材を元に「いま、最も子どものためになる」ことを『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』(加藤紀子著)にまとめた。
100の「してあげたいこと」を実践するにあたっては、さらに詳細な「421の具体策」も提示し、理屈だけでなく、実際に何をどうしてあげればいいのかということまで丁寧に落とし込んでいる。
「コミュニケーションの取り方」から「家での勉強のしかた」「遊び」「習い事」「ほめ方・叱り方」「読書」「英語」「スマホ対策」「ゲーム対策」「食事」「睡眠」まで、子育てのあらゆるテーマをカバーし、2020年現在において最も便利で役に立つ子育て本を目指した、新時代の「子育ての教科書」というべき1冊だ。本稿では、特別に本書から一部を編集・加筆して紹介する。
いま「学力の遅れ」より心配なこととは?
コロナウイルスによる長期休校がようやく解除されつつありますが、子どもたちの学力の遅れを心配する声が高まっています。この危機をなんとか乗り越えようと、学校現場ではオンライン教育の導入などが急ピッチで進められていますが、地域や学校によって格差が広がる懸念など、親にとっては不安だらけです。
ですがいまいちばんの心配は、子どもたちの「コミュニケーションの機会」が圧倒的に少なくなっていることです。コミュニケーションを通じて身につくものは、社交性だけではありません。語彙を増やし、表現力を高めることで、学力の向上にもつながるのです。
そこで大事になってくるのが、家庭での対話です。
「対話する能力」は、アメリカのシンクタンク、ブルッキングス研究所やニューヨーク科学アカデミーをはじめ、世界の教育機関が21世紀において最も大事なスキルだと言っています。
Googleやフェイスブック、スターバックスの創業者など、起業家精神に富むユダヤ人は、「議論好き」として知られています。彼らは対話を通じて、物事の多面的なとらえ方や批判的な思考力を身につけているのです。
また、「プレジデントFamily」(2017秋号)による東大生173人へのアンケートによると、その9割が「食事」や「お風呂」の時間などをうまく活用し、親子でしっかり会話をしていたと答えています。家庭での対話は、高い学力の下支えになっていることがうかがえます。
では、家庭でどんなことをすれば、「対話力」は育つのでしょう?
1日10分、子どもの話を聞く
一緒に家にいる時間が長くなると、親は食事の準備だけでも大忙しです。つい「○○しなさい」と命令口調になりがちですが、それでは一方通行です。子どもの話に「へぇ、そうなんだ」と関心を示してあげると、子どもはもっと対話したくなります。
スマホの電源を切る
親の方が食事中でもスマホが手放せずにいると、家族で食卓を囲んでいてもコミュニケーションが生まれません。思い切って電源を切る、というのも自然と対話を生み出す良いきっかけになります。
5回、質問する
ヴァンダービルト大学教育学部のデヴィット・ディッキンソン教授は、子どもと対話をするときに「5回やりとりすることを心がけよう」と提唱しています。その際、イエスかノーかで答えられるような質問ではなく、「なぜ?」「なに?」「どんな?」「どうやって?」「もし?」で聞くと、話が弾みます。
「いいね!」を忘れない
子どもは「いいね」「おもしろいね」「よくわかるよ」などと共感してもらえると、ここは自分が何を話しても大丈夫な場所だと安心します。
あえて「反論」を言う
ただし「いいね!」ばかりだと、子どもは自分にとって耳の痛いことや聞きたくないことには耳を傾けなくなります。そこで時には、あえて反対の意見を投げかけてみます。決して子どもの意見を非難するわけではなく、違う見方を伝えることで、対話を深めるのです。
『子育てベスト100』では、このようにアフターコロナにも通じる「これからの世界に必要な力」を身につけることを重視し、世界中のアカデミアによる膨大な「研究成果」から最も有用な情報をピックアップ、「わが子にどんなことをしてあげればいい?」と悩む親御さんたちに、ベストの具体策を厳選しています。
(本原稿は、『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』より、内容を編集・加筆して掲載しています)
川島隆太「学力を伸はばすたった一つの親の習慣」(「プレジデント Family」2017 秋号)
キャシー・ハーシュ=パセック、ロバータ・ミシュニック・ゴリンコフ『科学が教える、子育て成功への道』(今井むつみ、市川力訳、扶桑社)