トランプの登場は
人間の脳が退化している証拠?
男性:トランプの登場は人間の脳が退化している可能性を示していませんか?
出口:トランプの場合は、彼のことを描いた本によると、ホワイトハウスにいるほとんどの時間は居眠りをしたり、ボーッとしたりしていて、ほとんど仕事をしていない。そして暇があればツイッターでつぶやいている。もともとあまり勉強していないうえに、まわりのスタッフがいいレポートを上げても、ほとんど読まないなどと報道されていますね。本当かどうかはわかりませんが。
でも、そういう人は企業の社長の中にもいないわけではありません。
「もう社長になったから勉強しなくてもいい」
というタイプの人は結構いるのですが、当然ながらそういう会社はあまり伸びません。
人間の歴史を見ていると、10年、20年ぐらいの退化はしょっちゅうあるので、人間の歴史は一直線上には進まない。3歩前進、2歩後退で差し引き1歩前進くらいに考えておけばいいと思います。トランプは2歩後退の時代だと思います。
ただ、アメリカにまだ希望が持てるのは、何人もの知事が、トランプが何をいってもうちの州ではやらないと、断固拒否を貫くリーダーがたくさんいることです。
トランプが「地球温暖化に関する条約(COP21)からアメリカは脱退する」といったとき、カリフォルニア州やニューヨーク州の人口の多い州の知事は、「トランプが何といっても、うちの州はCOP21を守る」と言い切った。
実際に、GDPベースで見ると、アメリカの半分ぐらいの州はトランプのいうことを聞いていない。
外交・国防は大統領に全権がありますが、アメリカは州の独立権限がものすごく強いので、アメリカ全土がおかしくなったわけではありません。
右へならえという面では、日本のほうがひどいかもしれません。
日本の知事や市長で、政権に「それは違うでしょう」という人はあまりいませんからね。
そういう面ではアメリカは懐が深いというか、面白い国ですよね。
男性:ありがとうございました。
続きは次回にしましょう。
過去の僕の『哲学と宗教全史』全連載は「連載バックナンバー」にありますので、ぜひご覧いただき、楽しんでいただけたらと思います。