デモ参加者を“悪党”と批判する
トランプ大統領
5月25日、米ミネソタ州ミネアポリスにてアフリカ系米国人の男性が白人警察官に暴行され、亡くなった。その状況を撮影した動画が拡散し、米国各地で人種差別に反対するデモが起き、一部では暴動にまで発展している。トランプ大統領はデモ参加者を“悪党”と批判し、「略奪が始まれば銃撃も始まる」と力ずくで抑え込む姿勢を示している。
そうしたトランプ氏の強硬な姿勢は、不満を訴える側のアフリカ系住民などの人々と、それに反対する保守派の人々との溝を拡大し、米国社会の分断を深めているようにも見える。同氏の強硬なスタンスは、米国内の保守層の一部から強力な支持を得ているとの見方はあるものの、国民の分断を深める姿勢は一国の大統領として本当に適切なのだろうか。本来、国のリーダーは、自国の国民を一つの方向にまとめ上げることが役割であるべきと考える。
今回のデモ・暴動発生の背景には根深い問題がある。米国では人種間の経済格差が拡大した。コロナショックによって米国の所得・雇用環境は悪化し、人々の不満は大きく高まった。その状況の中で暴行死事件が発生し、社会の怒りが一気に噴出した。本来、トランプ氏は国を一つにまとめる政策を進めなければならない。しかし、同氏はデモ隊に対して力による鎮圧を示唆している。その姿勢は人々の反発を招き、人種間の対立が激化している。