お得な価格に惑わされてはいけない。欧州は企業を安売りするつもりはない。欧州企業は競合する米企業からは割安にみえる。強いドルと高い株価のおかげで米企業には資金力がある。だが部外者が域内企業の買収を目指すことを困難にする新たなハードルが築かれている。新型コロナウイルス流行によるシャットダウンが一段落し、徐々にビジネスが再開しているとはいえ、ストックス欧州600指数は3月初め以降、ドル換算で7%安の水準にある。これに対しS&P500種指数はおおむね横ばいだ。そのため予想PER(株価収益率)で比較した欧州株と米株の差は、世界金融危機以降で最大付近に開いている。だが、企業買収の担当者がこの利点を生かそうとすると壁にぶち当たる。欧州当局は大切な家宝を安値でさらわれるのを阻止するため、熱心にナイフを研いでいる。