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ネットリンチの加害者にとって有利な日本の現状を変えるために、中国の監視社会から学べることは多い(写真はイメージです) Photo:PIXTA

加害者にとって有利だったネット社会
木村花さんの死で日本が動き出した

 なんとも痛ましい事件が起きてしまいました。人気テレビ番組『テラスハウス』(フジテレビ系)に出演していた女子プロレスラーの木村花さんが急死したのです。SNSでの誹謗中傷により、自ら命を絶ったものと見られています。事件化を恐れてか、彼女の死の直後から誹謗中傷の書き込みは、「加害者」のアカウントごと次々と削除されていきました。

 この事件を受けて、社会が大きく動き出します。自民党ではインターネット上での誹謗中傷・人権侵害対策のプロジェクトチームが発足。総務大臣も、ネット上で誹謗中傷する匿名の発信者を突き止めやすくする方策を、有識者会議で検討する考えを表明しました。

 一方、SNSの業界団体も「SNS上での嫌がらせや名誉毀損などを禁止事項として利用規約に明記し、こうした行為を把握した場合、利用停止などの措置を徹底する」と緊急声明を発表しました。

 これまでの制度でも、今回のようなケースは、法的には名誉棄損罪で被害届を出し、刑事事件化することができたのですが、実際問題としては、警察がなかなか対応してくれません。被害者が先に発信者情報開示手続きをして、犯人を特定してから、初めて警察が動くのが現状です。犯人を見つけるのが被害者の役割というのは、加害者にとって圧倒的に有利な仕組みでした。

 私も文化人や芸能人の知人が多い関係で、このような誹謗中傷に悩まされているという話がしばしば身内で話題になります。しかし、今世の中で議論されている対策の延長線上には、正直、よい解決策がないという限界も感じています。

 たとえば有名人が、ネット上で誹謗中傷をしている人を突き止められるということは、ネット上で「アベノマスク」を批判している人を、官邸が簡単に突き止められるようになることを意味します。そのような制度を、高市早苗総務大臣や自民党プロジェクトチームの三原じゅん子座長が検討し始めることに、国民としては一抹の不安を感じます。