バブル時代に抱いた違和感
当時の僕がやっていた企業に対して保険を売るというビジネスの醍醐味は、お客様のいろいろな経営リスクを的確にとらえて、それをカバーする戦略的保険商品を提案するところにあった。だから、セールスマンには豊富な経験と深い知識に加え、お客様と保険会社の双方との交渉力も要求された。
常にお客様と向き合い、最高の商品を提供した結果として収入を得る。このステップをしっかりと踏むからこそ、収入が努力に比例して増え続けることに大きな幸せを感じた。とてもやりがいのある仕事だった。
ところが、バブル景気がすべてを変えた。お客様は投機的な情報をほしがるようになり、保険会社はもとより僕らセールスマンも販売する主力商品の品揃えを大きく変えた。そう、金融商品的な保険商品の販売に集中しはじめたのだ。
結果、わずかな努力で大きな富を得られるようになったものの、同時に得体の知れない違和感を覚えはじめた。夜の六本木の路上で一つ数百円から数千円の花束を売っていた時に感じたすがすがしい充実感のようなものが、まるでなかったのだ。
すでに、僕は30代後半にさしかかろうとしていた。「でっかく儲ける仕事」から「しっかり稼ぐ仕事」に舵(かじ)を切り直したい。そんなことを考えるようになっていた。
おりしも、アメリカ発の新たな文明の利器、インターネットが、世の中のあらゆる仕組みを根底から変えようとしていた。