スタイリングだけで変わるという選択

 例えば、なんとなく前髪が決まらず悩んでいたお客様が美容室に来たとしましょう。オーダーは「しっくりこないので似合うように前髪を切ってください」。お客様自身は前髪を切ってもらってなんとか解決しようとしていたようですが、カウンセリングをさせていただくと、じつは前髪の分け方に問題があることが判明しました。

 前髪の分け目は、目の高さなど顔のパーツによって左右される部分です。正しい分け方とスタイリング方法を伝え、お客様にしっくりくる分け目をご提案しました。この場合、「こっちの分け目のほうがかわいいんだ!」とお客様が気づくことで「髪を切らずに変わる」という目的が達成できたことになります。前髪の分け方についての詳しい方法は、この本でもお伝えしていきます。

 もう一例出しましょう。以前、前髪をシースルーバングにしたいと来店したお客様がいらっしゃいました。シースルーバングとは、今いちばん流行(はや)っている、おでこがうっすらと透けて見える薄い前髪のことです。
 そのとき僕が提案したのは、ハサミを入れてカットをするのではなく、スタイリングの方法でした。流行のシースルーバングは、前髪を薄く残して、上側の毛を横に流すようにドライヤーでブローしてあげると簡単に作れます。この場合も無駄に髪を切る必要はなく、スタイリングの工夫だけで簡単に目的が達成されます。
 ほかにも、スタイリング剤のつけ方を変えるだけで前髪の今っぽさは格段にアップしますし、普段髪が乾燥している人は、うるおいを与えるようなケアをし始めるだけでも、かなり様子が変わってくる……。髪を切るという行為に頼らず、髪の見た目を変える方法は、じつはたくさん存在するのです。(次回へ続く)