サブスクリプションの波が美容業界にまで広がっている。月に何度も髪を切るような人はそう多くないかもしれないが、今話題の「美容業界のサブスク」は、月定額でシャンプーとブローが通い放題になるというもの。このサービスの狙いはどこにあるのか?(清談社 藤野ゆり)

髪形が整うと
ビジネスがうまくいく

美容院のシャンプー台シャンプー・ブローだけのサブスク会員でも、美容院側は迷惑どころかウェルカムなのだという Photo:PIXTA

 大事なプレゼン前やジムの終わり、出先でちょっと髪を整えられたら…そう思ったことはないだろうか。忙しいビジネスマンにとって、平日も常に髪をびしっと決めるような余裕を持つことはなかなか難しい。仕事から帰宅すれば、シャンプーすることすら煩わしく、このまま寝てしまえたらどんなにいいかと思う。もっと、ランチに行くような感覚で美容院にも行けたら…。

 そんなニーズをかなえるのが、「メゾン」が提供するシャンプー・ブロー通い放題サービスだ。ユーザーはアプリに登録し月額料金を払うことで、好きな美容院で月に何度でもシャンプー・ブローをして髪形を整えることができる。選べる美容院は東京を中心に関西、果ては沖縄までその輪を広げており、現在の提携店舗は400以上。GardenやSORAなど、表参道や麻布十番という美容感度の高い土地に店を構える人気店がズラリと名を連ねる。

 美容院のサブスクリプションを立ち上げたきっかけは、メゾンを運営する「JOCY.inc」代表、鈴木みずほさんの原体験がもとになっているという。

「もともとこのサービスを立ち上げたのは、鈴木(代表)の会社員時代の経験によるものです。大事なプレゼンや会議の前に美容院で髪を整えていくと、何もしていないときよりうまくいく確率が上がると、鈴木は考えました。それは見た目の向上が結果に影響を与えたというより、髪形を整えたことで自分に自信が持てたことが大きかったようです」(JOCY.incの石黒武士副社長)

 髪が整うと、苦手だったプレゼンや会議にも自然と自信が持てるようになった。もっと気軽に仕事前や仕事中に立ち寄れる美容院が増えたら…、しかし月に何度も美容院に通うのは、金銭的にも負担がかかる。そこで生まれたのがサブスクリプションだったという。

「基本サービスをシャンプー・ブロー通い放題にしたのは、メニューをシンプルでわかりやすいものにして、美容院側の負担も減らすためです。ただユーザーのなかには、お店の雰囲気が気に入ったからこのままカットやカラーもしてもらいたい、ということもあるので、そういう場合はその都度お店にお願いをして、その場で別途料金をお支払いいただくことになります」