長時間の過重労働になりがちな飲食業では、正社員がすぐに辞めてしまい、ベテラン非正規に職能が蓄積されることがよくある。Iさんもその一人に見える。そういう人たちが働きがいを感じ、残ることができるか。開業率とともに廃業率の高い飲食業界で持続可能なビジネスモデルを確立するカギは、そのあたりにもありそうだ。

 だから富士そばは、非正規社員に100%の賃金補償をした。それは働く人のためであると同時に、たぶん、会社のためでもある。

 際コーポレーションも6月4日、飲食店ユニオンとの団交に応じた。取材に対し同社は、「交渉中なので個別の質問には答えられないが、ユニオンとは誠実に交渉していく」と答えた。

 ユニオンによると同社は、「100%は難しいが、アルバイトにも休業手当の支払いを考える」と団交の席で表明したという。

 実は政府も、休業手当の計算にかかわらず、休業等に伴う賃金減をできるだけ厚く補償することを推奨し、かかった費用の最大10割を雇用調整助成金で補助すると決め、現在は8330円の支給日額上限も、近く約1万5000円に引き上げる方針だ。

 第2次補正予算には、休業手当を払ってもらえない労働者に国が直接支給する新しい給付金も盛り込まれた(詳細はこれから決まる。国が払った場合も、企業の休業手当支払い義務はなくならない)。

 飲食店はじめ多くの現場を支える、Iさんのような非正規労働者たちの声が、大きな企業や国を少しずつ動かしている。

関連する相談先
飲食店ユニオン(首都圏青年ユニオン) TEL:03-5395-5359
日本労働弁護団 TEL:03-3251-5363(月・火・木15~18時、土13~16時)
厚生労働省・総合労働相談(各都道府県の労働局、労働基準監督署内など380カ所)
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html