ホワイトハウスがベトナム戦争以来最も破壊的な米国の大衆運動への対応にもたつき、米社会が人種間の関係という悩ましい問題に突き当たっている今、外国のオブザーバーの多くが、こうした出来事は米国の衰退を示すさらなる兆候だと解釈するだろう。そして内省的で分断された米国は恐らく世界情勢から手を引くと予想するだろう。だがそれは間違いだ。言うまでもなく、ドナルド・トランプ大統領にはおなじみの疑問がつきまとう。だが多くの世界的指導者が抱く疑問は、大半の米国人の脳裏にある問いとは異なる。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領やトルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長、中国の習近平国家主席のような人物は、トランプ氏のマイノリティーに対する考え方や、米国の民主主義の微妙な問題を特段気にしていない。彼らは米国が世界の民主主義を体現する存在で、その成否に苦難に満ちた人類の希望がかかっているなどとは考えず、またトランプ氏を評価する際、米国を最も深い価値観や最高の理想に近づけることに成功したか否かを基準にしない。彼らやその他大勢が知りたいのは、トランプ氏が何を望んでおり、それを手に入れる能力を持ち合わせているのか、在任期間はどのくらいで、同氏の退任後はどうなるかだ。