「銀行に貸し渋りをされたら他の銀行から借りればよい」というのが理屈ではあるが、実際には容易ではない。だから貸し渋りの景気への悪影響が深刻なのである。(塚崎公義)
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、世界的に経済活動が深刻な打撃を受けている。それが金融危機に発展する可能性もリスクシナリオとして考えておくべきかもしれないと思い、数回のシリーズを組むことにした。メインシナリオではないので、過度な懸念は不要だが、頭の片隅には入れておいていただきたい。
今回は第4回であり、金融危機の全体像については第1回「リスクシナリオとしての金融危機を考えるべき理由」をご参照いただければ幸いである。
銀行は融資に際して借り手の返済能力を精査する
銀行は、融資に際して借り手の返済能力を精査する。借り手が倒産して、融資した資金を返済できなくなっては、銀行の損失になってしまうからである。株主有限責任の原則によって、借り手の株主の信用力が当てにできないからなおさらである。
以前からの取引銀行であれば、借り手のことをよく知っているので、業況の急変でもない限り、「また貸してください」「わかりました」で済む。だが、取引のない銀行に融資を申し込むと、「御社の返済能力を精査しますので、時間をください」となるはずだ。
銀行が貸し渋りをしている時には、多くの借り手が隣の銀行に借り入れの申し込みをしているだろうから、隣の銀行で精査の順番待ちが起きることもあるだろう。
そうして融資実行までに時間がかかる間、材料が仕入れられなくて事業活動がストップしてしまい、倒産してしまう借り手も多いはずだ。