ロシアではシベリアの国営研究所でも軍駐屯地でも、国内屈指の科学者らがウラジーミル・プーチン大統領に要求された難題に応えるべく奮闘している。その要求とは、秋までに新型コロナウイルスのワクチンを開発することだ。研究所ではラットで実験が行われ、駐屯地では臨床試験に控えて軍人が隔離されている。新型コロナ感染症(COVID-19)の予防ワクチン開発を巡る世界的な競争は、1960年代にソビエト連邦共和国が米国に対抗心を燃やした宇宙開発競争に例えられている。期限に間に合わせるため、ロシアは軍を巻き込み、試験の承認期間を短縮化し、臨床評価も加速させている。目指しているのは、勝者に経済的・政治的な優位性をもたらす可能性があるワクチン開発競争で勝利を収めることだ。ロシアは当初、感染拡大を阻止するためにロックダウン(都市封鎖)すべきかどうかで揺れていた。だが政府は今や、真っ先に自国民にワクチンを接種すべく奔走している。