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【新連載】「女性はすべてを手に入れられるか」論争――ヤフーの新CEOはこの問題にどう答えてくれるでしょうか

林 正愛 [アマプロ株式会社社長]
【第1回】 2012年8月30日
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 メイヤーは1人目の子供を妊娠していて、10月に出産予定です。日本では、育児休暇をどうするか、などの話がよく盛り上がりますが、日本で、出産を2ヵ月後に控える人をCEOに選ぶだろうかと考えると、現状ではなかなかありえないだろうと思います。

 彼女は6月にヤフーからアプローチされましたが、面接の際に自分が妊娠していることを告げました。法律的には、アメリカでは面接の際に妊娠をしていることを言う必要はなく、雇い主も聞けないことになっています。しかし、彼女自身が自分が妊娠していることを告白し、その後も何度かの面接が行われ、正式に採用されました。数週間育児休暇を取り、戻ってくると宣言しています。

 1970年代から妊娠した女性の差別について調べているある機関によると、妊娠をしていることを隠して採用されたものの、その後に妊娠が発覚されて採用を取り消された人の話はよくあるそうです。法律的には許されないものの、実際に繰り返し起こっていると言います。ただし、現在は少しずつ希望も見えつつあり、妊娠をしても採用するという企業も出始めています。

 メイヤーは最近の最も著名なロールモデルになり、変化が訪れるかもしれない、と話す人もいます。この規模の企業が妊娠している人をCEOとして迎えるのは初めてであり、彼女が妊娠していることを知りながら面接を行い、最終的に彼女を選んだことは画期的なことだという意見も出ています。

 メイヤーがヤフーにとってベストのチョイスだったかというと、いろいろ選択肢の中で消去法的に出てきたとも言われています。企業を経営した経験はなく、その手腕は未知数だという議論も起きています。

 ヤフーは近年は成長できず苦戦しているとは言いつつも、実際にはかなりポテンシャルのある企業。2011年の売上高はおよそ50億ドル、純利益率は20%以上です。直近の2012年第2四半期決算でも広告収入は前年比増を維持しています。何よりも魅力は多くの読者がいること。「基本に立ち戻る必要がある」(We need to get back to basics.)と彼女は語り、抱える多くの読者を最大限生かしていきたいと考えているようです。

 はたして苦しむヤフーの救世主に彼女がなれるのかどうか。私としては、やはり彼女の女性リーダーとしての力に期待しています。女性は男性とは違うリーダーシップをとる傾向があると言われます。遠慮しすぎないので、率直な対話が生まれやすい、経営の議論の意思決定に異なる視点を提供する、ネットワーキングが得意、経営の意思決定でバランスの質が上がるというデータもあります。

 ITはある一部のものというイメージがあり、今でもIT業界という言葉が言われています。ただ、ITは社会で欠かせない、インフラになりました。ネットショッピングをはじめ、ITをうまく使っている女性はたくさんいます。男性のイメージが強いIT業界ですが、女性の視点は欠かせなくなっています。メイヤーがどんな結果を出すのか、子供を持つ働く女性はすべてを手に入れられるのか、当面は目が離せなさそうです。

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林 正愛
[アマプロ株式会社社長]

りん・じょんえ/BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ、ファイナンシャルプランナー、英検1級、TOEIC955点。津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。British Airwaysに入社し、客室乗務員として成田―ロンドン間を乗務。その後中央経済社、日本経済新聞社にて、経営、経済関連の書籍の企画および編集を行う。2006年10月にアマプロ株式会社を設立。仕事を通じて培ってきたコミュニケーション力や編集力を活かして、企業の情報発信をサポートするために奔走している。
企業の経営層とのインタビューを数多くこなし、その数は100名以上に達する。その中からリーダーの行動変革に興味を持ち、アメリカでエグセクティブコーチングの第一人者で、GEやフォードなどの社長のコーチングを行ったマーシャル・ゴールドスミス氏にコーチングを学ぶ。現在は経営層のコーチングも行う。コミュニケーションのプロフェッショナルが集まった国際団体、IABC(International Association of Business Communicators) のジャパンチャプターの理事も務める。2012年4月から慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科で学んでいる。2児の母。

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日本経済の屋台骨を支えてきた製造業が苦しむ中で、さまざまな技術革新が生まれ、グローバル競争の新たな舞台となっているIT業界。いまやあらゆるビジネスがITを抜きにしては、競争力が立ちいかないのが現状だ。男性のイメージが強いIT業界で、実は多くの女性たちが活躍している。IT業界やそれに関わる仕事をして活躍している女性たちに焦点を当てながら、新しい競争の時代のリーダー像を紹介していく。
 

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