関西電力のいわゆる「原発マネー還流問題」で、関電は16日、善管注意義務違反があったと認めた旧経営陣に対して損害賠償を求めて提訴した。新経営陣は提訴によって過去との決別をアピールしたいところだが、いまだに関電の自浄能力が乏しいという声は根強い。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
善管注意義務違反も損害額も
調査報告書は「想定外」まで踏み込んだ
関西電力の役員らが、高浜原子力発電所が立地する福井県高浜町の元助役、森山栄治氏(故人)から金品を受領していた「原発マネー還流問題」について、現旧経営陣の善管注意義務違反の有無や損害賠償責任を負うかどうかを調べる社外の弁護士で構成する調査委員会が6月8日、報告書を関電に提出。関電はその報告書を公表した。
この調査報告書は、当初の予想を大きく覆すものだった。岩根茂樹前社長、八木誠前会長、森詳介元会長の歴代3社長ら旧経営陣5人に善管注意義務違反があったと指摘し、損害額は少なくとも約13億円に上ると結論付けた。
関電関係者はうなった。「ここまで踏み込むとは、想定外だった。これで旧経営陣を提訴せざるを得なくなった」。3月にも別の弁護士らで構成した第三者委員会が報告書を公表していたが、こちらは現旧経営陣の善管注意義務違反には踏み込んでいなかった。
調査委による今回の報告を踏まえ、関電の監査役は旧経営陣に対する損害賠償額を少なくとも19億3600万円と算定。16日、大阪地方裁判所へ提訴した。森本孝社長ら現経営陣は、調査委の報告書を錦の御旗とし、この提訴を持って過去との決別をアピールして再出発したい狙いだ。