関西電力の松村孝夫常務執行役員ら
経営陣に「原発マネー」を巡るスキャンダルが発覚した関西電力の松村孝夫常務執行役員(左手前)らは9月30日、大阪市役所を訪れ、中尾寛志副市長(右手前)らに頭を下げた Photo:kyodonews

 それは9月26日深夜に共同通信が配信したニュース速報によって始まった。

「関電会長ら6人に計約1億8千万円」

 間を置かずに二の矢が飛んだ。

「関電の八木会長、税務調査を認める」

 今や電力業界で東京電力をしのぐ大きな影響力を持つ関西電力の経営陣に「原発マネー」を巡るスキャンダルが発覚した。関電の高浜原子力発電所が立地する福井県高浜町の元助役、森山栄治(故人)から多額の金品を受け取っていたことが金沢国税局の調査で分かったというものだった。

 関電社長の岩根茂樹は翌27日午前に緊急会見を開いて謝罪した。

「コンプライアンス(法令順守)上疑義を持たれかねないと厳粛に受け止めている。深くおわび申し上げます」

 岩根は同時に事実関係の一部についても明らかにした。岩根に加え、関電の最高実力者とされる会長の八木誠ら20人が2011年から18年までに総額3億2000万円相当の金品を受け取っていた。関係者によると、金品は現金をはじめ商品券、スーツの仕立券などに加え、美術・工芸品も含まれているという。

 驚きは巨額の金品の受領だけではない。岩根の会見によって浮かび上がったのは、関電側の不可解な対応だった。

「常識の範囲を超える金品は受け取りを拒んだり、返却を試みたりしたが、強く拒絶されたため一時的に個人の管理下で保管していた」

 原発は「迷惑施設」「忌避施設」ともいわれる。社会としての必要性はあるが、立地地域にとっては不都合な施設としてしばしば反対運動が展開され、住民の合意形成が極めて難しいからだ。ごみ焼却場などもこれに当たるが、原発の比ではない。このため原発の立地場所には過疎地が選ばれる。一方の立地自治体側も地域振興を理由に「原発マネー」を受け入れることになる。

透ける原発マネーを巡る
「還流システム」の存在

 ただし今回のケースでは理解しにくいことがある。関電が地元関係者に金品を提供するのではなく、関電の経営陣が地元有力者から提供を受けている点だ。しかも1回限りではない。長年にわたり、恒常的にやりとりが行われていたようだ。そこからは原発マネーを巡って「還流システム」の存在がうかがわれる。これが今回の関電問題の核心といってもいい。関電問題に詳しいジャーナリストはこう指摘する。

「原発によって潤う人たちの間を巨額のカネがグルグル回るという実態の一端が見えた」

 関電問題ではさらに大きな疑問が浮かび上がる。元助役は原発関連工事を請け負う建設会社の顧問を務める一方で、関電の子会社の顧問を長く務めていたと報じられていることだ。関電は国税当局の税務調査を受け、昨年夏には社内調査を実施している。しかし、そのことについては一切公表せず、不信感を増幅させた責任は大きい。

 こうした関電の対応に強い危機感を抱いたのが政府だ。官房長官の菅義偉は問題が表面化した翌日27日の記者会見で関電を厳しく批判した。