米国で黒人のジョージ・フロイドさんが警官に押さえ付けられて死亡した事件と、その後英国で起きた人種差別への抗議行動は、英国内で予期せぬ事態を引き起こした。それは大英帝国に関する熱のこもった論議だ。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を受け、多くの人々が未来に無力感を抱いている現状の中、過去が論争の的になっている。  他の大半の欧州諸国と違って、英国は自国の過去について体系的な再評価を全く行ってこなかった。公共の場からの記念碑の大量撤去を引き起こすような革命も、独裁も、外国による占領もなかった。大半の英国人は、自国の歴史に多くの恥ずべき部分があるとは考えていなかった。