コロナ騒動に紛れた火事場泥棒ではなく
コロナのせいでむしろ遅れた香港政策
本来、今年3月5日に開催されることになっていた全人代(全国人民代表大会)は、新型コロナウイルス肺炎(COVID-19/以下、コロナ)の流行によって延期されていたが、5月22日に開幕し、28日に閉幕した。
今般の全人代で最も注目されたのは、「香港特別行政区の健全な国家安全の法律制度と執行機構を建立するための決定」(以下、決定)が提出され、採決されたことだ。香港特別行政区基本法(以下、基本法)の第23条には以下の条文がある。
「香港特別行政区は反逆、国家分裂、反乱扇動、中央人民政府転覆、国家機密窃取のいかなる行為をも禁止し、外国の政治的組織または団体の香港特別区における政治活動を禁止し、香港特別行政区の政治的組織または団体の、外国の政治的組織または団体との関係樹立を禁止する法案を自ら制定しなければならない」
条文に「法案を自ら制定しなければならない」と書いてあることが、キーポイントの1つだ。
それにしても、なぜ「このタイミングで?」という疑問が世界を駆け巡り、「コロナ災禍に紛れて、まるで火事場泥棒のようではないか」という憶測が定着しているが、実は真相はそうではない。
まず、昨年香港特別行政区政府として「逃亡犯条例改正案」を通そうとしたものの、香港市民の激しい抗議に遭い、9月4日に廃案に追い込まれてしまったことは周知の通りだ。今年9月には、香港政府の立法機関である立法会議員の選挙がある。このまま香港政府に任せたのでは、香港統治が危うくなると習近平国家主席は判断したのだろう。
そこでかくなる上は「合憲的」に、「中国」という国家全体をカバーする中華人民共和国憲法(以下、憲法)と基本法に秘かに填め込んである「爆弾」を炸裂させようと、昨年から周到に計画を練っていた。