中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が5月28日に閉幕した。新型コロナの感染拡大を受けて開催時期を延期しただけでなく、例年発表してきた経済成長目標も出さない、異例ずくめとなった。そして今回、掲げられた政策の中身からは、一党独裁体制の崩壊の前兆が垣間見えてくる。(国際政治評論家・翻訳家 白川 司)
異例ずくめの
今年の全人代
今年の全人代(全国人民代表大会)は異例ずくめだった。
3月の予定を大幅に延期したのはもちろんであるが、例年であれば10日以上おこなわれるところを、今回は5月22日から28日までの6日間と大幅に短縮された。
また、ほとんど恒例行事化されていた経済成長目標の発表もされなかった。
この全人代の変化は今後の中国が大きく変化していくことを象徴しているのではないだろうか。
全人代には「日本の国会にあたる」という枕ことばが付くことが多い。だが、実際は似て非なるものだ。
重要な政策はすべて「チャイナセブン」とも呼ばれる中央政治局常務委員会で決められ、全人代は単なる報告の場であり、追認の儀式をおこなう場にすぎない。
では、共産党幹部が一堂に会す全人代の役割とは何なのか。
それは、今年度、死守すべき共通目標を参加者各自が受け取ることである。
全人代で発表されることは共産党が一丸となって死守すべき目標でもある。それだけに、そこで何が述べられ、何が述べられなかったかを知ることは、中国の今後を知る上で重要なのである。