米国の対中関係が悪化したと思うなら、オーストラリアと中国の関係はどうか。オーストラリアのスコット・モリソン首相は4月、新型コロナウイルスの発生源を巡る国際調査を呼び掛けた。調査の標的とみられる中国は、すかさず報復に動いた。豪産大麦に80.5%の関税を課し、豪食肉企業4社からの牛肉輸入を禁止。中国国民に対し、オーストラリアへの渡航自粛を呼びかけた。中国国営の英字紙「環球時報(グローバルタイムズ)」はオーストラリアを「米国の犬として立ち回る巨大カンガルー」と呼び捨てた。2年前には主に米中間の対立だったものが、中国と先進民主主義国との全面対決の様相を帯びつつある。他国の間でも既に、中国による技術覇権の追求や不公平な貿易慣行に加え、戦略地政学に基づく影響力の拡大、国内の抑圧を巡り、懸念が出ていた。今年に入り、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)初期に中国が実態を隠した疑いや、香港への国家安全法導入を背景にこうした懸念は一段と強まっている。