レビュー
いまや、コンピューターのない生活を想像することは不可能である。パソコンやスマートフォンだけではなく、カメラ、エアコン、ゲーム機などの家電製品をはじめ、すべての電子機器はコンピューター制御されている。それに、自分自身は使っていないと思っていても、テレビ放送や電力網、金融サービスなど日ごろ利用しているほとんどのインフラは、コンピューターに依存している。
本書『教養としてのコンピューターサイエンス講義 今こそ知っておくべき「デジタル世界」の基礎知識』は、このような現代において改めて、「コンピューター」がどのような仕組みで動いているのかということを知ることができる。それも、歴史的、体系的、網羅的に、基本中の基本から。
特に強く印象深いのは、テクノロジーの更新が激しいコンピューターサイエンスにおいて、コンピューターの基本的なアイディア自体は大きく変わっていないという点である。この本で一度しっかりと仕組みを知っておけば、今後のコンピューターサイエンスの発展をフォローしていくこともできるはずである。
身近に溢れかえるコンピューターについて知識を身につけることは、自分自身のコンピューターの使い方などに変化を起こすことにもつながるはずだ。また、不確定な未来のいくつかを予測し、対応できるようにもなるだろう。まさしく『教養としてのコンピューターサイエンス』の題にふさわしい、読み応えのある本である。(河合美緒)