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「人生を変えるのに、最も効果的なライフハックとは何だろう?」と、デイヴ・アスプリー氏はこれまで20年近くかけて、シリコンバレーの最新のラボからチベットの修道院まで、世界中のあらゆる場所に足を運んで、体当たりの自己実験で研究してきた。
さらに、脳科学、生理学、東洋哲学、心理学といった分野の専門家の他、アスリート、医師、ライフハックの達人まで、400人以上の研究者や成功者たちに、「最も重要な3つのことをあげてほしい」と取材を重ねてきた。
そんな探求の果てにつかんだ答えを「脳」「休息」「快楽」「睡眠」「運動」「食事」「幸福」「人間関係」等の分野に体系化、1冊の「究極のハック集」にまとめたのが『シリコンバレー式超ライフハック』(デイヴ・アスプリー著、栗原百代訳)だ。
著者自身、「20年前にこの本に載っていることを知っていたら、どんなに人生が違っていただろう」という衝撃的なハックが目白押しの本書から、一部を特別に公開する。

ネガティブな気持ちをぶちまける「5分間ルール」

「奇跡」について聞きたければ、ハル・エルロッドの話を聞くことをお勧めする。モチベーションを高めてくれる講演者、すばらしいコーチ、ベストセラー1位を記録した『人生を変えるモーニングメソッド』(大和書房)の著者だ。ハルは一度ならず二度、死を免れている。

 20歳のとき、飲酒運転で時速110キロで飛ばしていた車に轢かれて死亡を宣告されたが、6分後に息を吹き返した。医師の悲観的な見通しをくつがえして、情熱と意志の力でふたたび歩けるようになったばかりか、84キロのウルトラマラソンを完走するまでに回復した。その後、勤めていた有名なナイフ製造会社カットコーで販売員としての記録を樹立し、販売部門の責任者としても全米1位の成績を収めた。いまでは引っ張りだこの講演者、多数のベストセラーの著者である。

「自分でコントロールできること」に集中する

 カットコーでハルは、メンターから「5分間ルール」と呼ばれるテクニックを教わった。ものごとがうまくいかないとき、5分間だけネガティブな気分になることを自分に許可するというものだ。

 タイマーをセットして、5分間だけ泣きごとを言い、うめき、不平をつぶやき、感情をぶちまける。だが5分後には、自分の力で変えられないことにエネルギーを使うのをやめ、自分が進みたい方向、自分がコントロールできることに集中していくのだ。

 ハルはこのルールを事故後に実践した。昏睡状態から目覚めて1週間後、医師が両親を呼んで言った。「息子さんのことが心配です。身体は回復しているのですが、現実が認識できていないようなのです」。ハルはいつも看護師やセラピストと笑ったりジョークを飛ばしたりしていた。二度と歩けなくなった若者の正常な反応とは思えなかった医師たちは、ハルが現実から逃避するために一種の譫妄状態になっているのではないかと心配したのだった。

 だが、ハルは妄想を生きていたのではなかった。5分間ルールを生きていたのだ。

 過去には戻れない。ただ途方に暮れ、嘆き悲しんで、事故が起こらなかった世界を求めても意味がないことがわかっていた。ハルは選択肢が2つあると考えた。医師の言うことが正しく、二度と歩けないのならその現実を受け入れる。だが、もし間違っているなら、車椅子の人生は断固として受け入れない。

 結局のところ、医師は間違っていた。大腿骨が2つに、骨盤が3つに砕け、意識不明の昏睡状態で発見されてから3週間後、ハルは最初の一歩を踏み出した。そして1ヵ月後には退院し、医師の指示に反して職場に復帰し、記録破りの販売成績を収めたのだ。

朝の1時間に「6つの鉄則」を実践する

 ハルにそんなことができたのは、できると考えたからだけではない。ポジティブ思考は魔法のように問題を解決してくれるものではない。ハルの考えでは、奇跡を起こす鍵は、最良の知的・身体的・感情的状態に自分を置いて、最高の結果を求めて最善の努力をすることにある。

 ハルによれば、いちばんこの状態になりやすいのは朝だ。たいていの人は起きないといけないから起きる。行かなくてはならない場所、しなくてはならないことがあるから、アラームをセットする。しかしそのせいで、自分ではなく他者の必要のための一日が始まってしまう。自分の価値観や目標に沿って計画的・意図的に選ぶ一日ではなく、目の前のことに追われるだけの一日になってしまうのだ。

 ハルは自分に集中して、きのうよりも良い自分になるために朝を使っている。毎朝1時間を使い、自分の命を救ってくれた自己啓発のルーティンを行っている。ハルはこのルーティンを、構成する各要素の頭文字をとってSAVERSと呼ぶ。瞑想(SILENCE)、自己肯定宣言(AFAMATION)、視覚化(VISUALIZATION)〔成功をイメージする〕、運動(EXCERCISE)、読書(READING)、記録(SCRIBING)〔日記などを書くこと〕である。

 これがハルのモーニングメソッド、どんな障害にも打ち勝てる酸素マスクだ。

 やり方は柔軟に変えてよいと考えるハルだが、それを一日のいつ行うかについては、朝以外ではメリットがないと主張する。特にサイレンスとアファメーションと視覚化は潜在意識に働きかけ、あなたのその日の考え方、行動の仕方、反応の仕方を変え、ひいては生活の質を変えるので、朝に行うことが重要だ。

 自分を整えるためのSAVERS以外のプラクティスは、朝以外の時間にすることをハルは勧めている。とりわけ、その日もっとよくできたことは何だったかを振り返る内省の時間は、夜が適しているという。これはエゴを傷つけることなく自分の不完全さを受け入れ、自分を向上させることができるシンプルな方法だ。

(本原稿は、『シリコンバレー式超ライフハック』〈デイヴ・アスプリー 著/栗原百代 訳〉からの抜粋です)