赤字国債「国は赤字」は本当だろうか Photo:PIXTA

「国は赤字」というのは、中央政府の財政収支が赤字だということだ。日本の外国との取引は黒字であり、対外純資産も巨額の黒字である。(塚崎公義)

 新型コロナ不況への対応で、財政赤字が巨額に膨らんでいる。それを懸念する人もいるだろうから、財政に関する数回のシリーズを組むことにした。今回は、その第1回である。

「国の赤字」は中央政府の財政赤字

「国の赤字は巨額で、借金も巨額だ」と言われている。それを聞いて「日本の国が外国から借金をしている」と思うかもしれないが、そうではない。日本国と外国との取引は国際収支統計に記録されていて、そこでは「日本国の家計簿」とも言うべき「経常収支」が大幅な黒字となっているのである。

「国の赤字」という言葉は、「地方公共団体ではなく中央政府について述べると、財政収支は赤字である」ということなので、誤解をしないように気をつけたい。

 政府(中央政府のこと。以下同様)の財政収支が赤字なのに日本国が黒字なのは、民間(地方公共団体を含む、以下同様)が大幅な黒字だからである。

 民間部門は、海外との取引でも巨額の黒字、政府との取引でも巨額の黒字を稼いでおり、海外にも政府にも巨額の「貸し付け」をしているのである。

 余談であるが、財務省のホームページに「日本の財政を家計に例えると収入が○万円、支出が○万円で不足分を借金で賄っていて、借金が巨額です」といった説明がなされているが、これはミスリーディングである。

 家計の赤字を減らすには飲み会などを減らせばよく、それによって困るのは赤の他人である飲食店である。しかし、財政赤字を減らすには増税や歳出削減が必要であり、それによって困るのは赤の他人ではない国民である。

 この違いは決定的である。筆者が例えるならこうだ。

「父ちゃんは給料以上に金を使っていて赤字だが、母ちゃんが自分の給料を全部貯めているから、家計は黒字である。母ちゃんは父ちゃんに金を貸し、余った分を銀行に預金しているので、夫婦合計としては問題ないのだ」といった具合であろう。

 父ちゃんとしては、母ちゃんも生活費を負担しろと言いたいだろうが、それは家計の危機とは無関係な話である。財務省も増税させろと言いたいだろうが、それは日本国の危機とは無関係な話なのである。